2022年12月30日金曜日

ザ・メニュー

『ザ・メニュー』

サスペンス映画。2022年公開作。監督はマーク・マイロッド。アニャ・テイラー=ジョイ主演。レイフ・ファインズとニコラス・ホルト出演。2022年12月にMovix亀有にて初観賞。

謎めいた一流シェフが仕切っている予約困難な孤島の超高級レストランで、ある特別なコース料理を一緒に味わうことになった裕福な客たちが徐々に異常なもてなしを受けるお話。

『ミッドサマー』や『セブン』が脳裏によぎる、グロい描写有りで少し怖めの、喜劇と言うよりも悲劇。

美食家ではないので観る気は無かったのだが、ニコラス・ホルトが出ているのを知って興味が湧いた。2019年に『ライ麦畑の反逆児』を観覧した後に、その主演を務めた演技の上手い美青年のホルトが、私の好きな映画『アバウト・ア・ボーイ』に出ていた生意気な子役の成長した姿だと知って、それ以降、彼には注目していた。そして、今回、久しぶりに彼をスクリーンで見たくなった。本作では難しい役を見事に演じ切っていた。今後も機会があったら観てみたい俳優さんだ。

金持ちだが人間的に問題がある客たちの中で、唯一まともで毅然としていた若い女性マーゴをアニャ・テイラー=ジョインが好演。昨年12月に観た『ラストナイト・イン・ソーホー』や先月観た『アムステルダム』ではあまり好きにはなれなかったが、今回は、ほかに魅力的な若い女性がいなかったせいかもだが、すごく綺麗に見えた。特にその鋭い眼差しが印象的でその独特な美しさにほれぼれした。そして、彼女が頬張るチーズバーガーがほかの高価そうな洗練された料理以上に美味しそうに見えた。

レイフ・ファインズがその店の奇妙な料理長を熱演。今年3月に観覧した『キングスマン:ファースト・エージェント』の時と同様、素晴らしい演技だった。本当に素晴らしい俳優さん。

正直、好みではなかったが、退屈でもなかった。むしろ、不思議と楽しい観覧だった。上映時間106分。丁度いい長さだったから、そう感じられたのかもしれない。

2022年11月30日水曜日

ドント・ウォーリー・ダーリン

『ドント・ウォーリー・ダーリン』

スリラー映画。2022年公開作。監督はオリヴィア・ワイルド。『ブックスマート』に続いて2作目。出演もしている。主演はフローレンス・ピュー。2022年11月にMovix亀有にて初観賞。

砂漠の中にある人工的で奇妙な街で暮らすある夫婦の物語。

外で働く夫の為に、彼の妻は、昼間は家事に勤しみ、バレエのレッスンをこなし、夫が帰宅してからは、彼を癒すことに全力を注ぐ。そんな家庭が集まった街。時代遅れの世界観に違和感を覚えたが、主人公のアリスが少しずつその街の異様さに気づき始めて、その街のリーダーや夫を問い詰め、自由を求めて爆走する姿に魅せられた。妖艶で綺麗で可愛らしくて凛々しいアリスをフローレンス・ピューが好演。

アリスの夫を演じたのはハリー・スタイルズ。英国訛りだな、とか、どっかで見たことある顔だな、と感じたので観賞後に調べてみたら、ヴォーカル・グループ、ワン・ダイレクションのメンバーだった。映画デビューは、2017年公開のクリストファー・ノーラン監督作『ダンケルク』。役者としてはまだ新人さん。道理でほかの俳優さんとは違う独特の雰囲気を醸し出していた訳だ、と納得。因みに、監督のワイルドと本作公開前から交際しているらしい。下世話な話だが、恋人の彼女に演技指導されたり、彼女の前でフローレンス・ピューといちゃつくのはやりにくかったのではなかろうか。

男社会の恩恵を受けてきたおじさんにはバツの悪い、男社会に辟易している女性には感情移入しやすいであろう、芸術的で洗練された作品。そして、フローレンス・ピューの素敵な演技を終始拝める眼福な2時間でもある。

2022年10月28日金曜日

ブレット・トレイン

『ブレット・トレイン』

アクション・コメディ映画。2022年公開。デヴィッド・リーチ監督作。ブラッド・ピット主演。真田広之出演。原作は伊坂幸太郎の小説『マリアビートル』。2022年9月にTOHO流山おおたかの森にてIMAXで初観賞。

東京発京都行きの新幹線に乗り込んでブリーフケースを盗むよう指示された殺し屋レディバグがその任務遂行のために奮闘するお話。

含蓄がありそうなセリフが多々あったが、今後の人生の糧になるような言葉では無いような気がして、大方、聞き流した。何も考えずに目の前で繰り広げられるアクションを楽しむ作品。最後までアクシデントの間が絶妙で面白かった。

レディバグをブラッド・ピットがお茶目に好演。話し方だけでなくアクションも他の作品同様カッコよかった。そして、レディバグが盗むブリーフケースの持ち主だった二人組のギャングのうちの一人、レモンが、『きかんしゃトーマス』の大ファンで常にそのアニメ番組を通して物事を考える様が愉快だった。何か一つの事に熱中できず、何事にも浅い知識しかない私にとっては、羨ましくもあった。そのほかの登場人物で強く印象に残ったのは、やはり、日本人俳優である、真田広之。『座頭市』へのオマージュなのか、仕込み刀での殺陣がカッコよかった。現在、日本で大人気のお笑いコンビかまいたちの一人山内健司に似ているマシ・オカも車掌として出演。2006年から放送されていたTVドラマ『HEROES』にレギュラー出演していた為、米国では有名な日本人の一人らしい。そのドラマシリーズで、もともとは「バンザイ」だった彼の決め台詞をアドリブで「ヤッター」と叫んで、その後、それを定着させた、と聞いた時、米国での日本のイメージってまだまだ古いんだなと感じた。真田広之も、2003年公開のトム・クルーズ主演映画『ラストサムライ』ではアメリカ側のスタッフに日本文化について熱心に進言していたらしい。洋画で少しずつ不自然な日本の描写が減ってきているのも、ある程度は、彼らのような世界で活躍している日本人俳優のおかげなんだろうな。そして、ずっと声だけの出演だったが、最後に少しだけ登場したサンドラ・ブロック。2022年6月に観覧した『ザ・ロストシティ』にもブラピと共演していたが、幾つになってもお綺麗なお方だ。

殺す気満々の格闘、銃撃、剣戟の連続だったので流血シーンも多々あったが、展開がスピーディだったので悲壮感はほとんど無く、ただただ楽しかった。アクション映画の良作。

2022年9月22日木曜日

ブラック・フォン

 『ブラック・フォン』

スリラー映画。2022年公開。スコット・デリクソン監督作。ジョー・ヒル著のホラー小説『黒電話』が原作。メイソン・テムズ主演。イーサン・ホーク出演。2022年7月にMovix亀有にて初観賞。

奇妙な男に監禁された内気な少年フィニーが、その男との戦いを通して逞しく成長するお話。

フィニーがいじめられっ子で幽霊も出てくるので、スティーヴン・キング作品の『IT/イット "それ"が見えたら、終わり。』や『アトランティスのこころ』みたいだなと思っていたら、原作者のヒルは彼の息子だった。血は争えないな。ただ、野球チームの好投手にもかかわらずフィニーがいじめっ子たちに虐められている事に若干の違和感を覚えた。原作の小説には、フィニーは喧嘩が嫌い、のようなもう少し分かりやすい状況説明があるのだろうか。そして、フィニーを演じていたメイソン・テムズが、2020年9月に観覧した『mid90s』の主演子役に似ていたので、勝手に同じ子役俳優だと思っていたが、観覧後、そうではないことを知り、苦笑い。未だ外国人は見分けがつかない。おまけに、最近は見慣れない日本の若い俳優も見分けがつかなくなり始めた。それは、私が年を取ったという証拠なんだろうな。

そのフィニーが、監禁後、友人たちに励まされて徐々に逞しくなって、覚悟を決めてその謎の男と対決する。そんな彼と彼を心配する妹の姿が微笑ましかった。そして、カタルシスも感じられた終盤の展開が鮮やかで面白かった。

主演と思っていたイーサン・ホークは助演だった。しかも、ずっと変なお面をかぶっていた。スクリーンで彼を見るのが初めてだったこともあり、その点には失望した。彼があの役を演じる意味があったのだろうかとさえ感じた。

ホラー要素もあったので数回ビビったが、全体的にはさほど怖くはなかった。一人の少年の微笑ましい成長譚。メイソン・テムズがその少年を好演。

2022年9月2日金曜日

エルヴィス

『エルヴィス』

エルヴィス・プレスリーの伝記映画。2022年公開。バズ・ラーマン監督作。オースティン・バトラーとトム・ハンクスのダブル主演。2022年7月にMovix亀有にて初観賞。

ロックの神様、エルヴィス・プレスリーの生い立ちから晩年までが、彼のマネージャー、パーカー大佐の視点で描かれている。

私の好きな洋楽はイギリスのザ・ビートルズやザ・ローリング・ストーンズから。彼らのデビュー前からアメリカに存在していた、黒人ミュージシャンが楽曲を発表していたレコードレーベル、モータウンやエルヴィス・プレスリーの存在は何となく知っていたし、エルヴィスのデビュー当時のアメリカにおける人種差別の酷さも、映画『マルコムX』で知っていたつもりになっていた。しかし、本作で描かれていた当時のアメリカ社会の現実は私の認識を少し超えていた。特に、白人は黒人に迎合してはいけないとむきになって主張する保守的な白人たちには驚かされた。そんな彼らを無視して白人として黒人の音楽を踊りながら歌い続けるエルヴィス。そして、そんな偏見に満ちた社会で抑圧されてきたせいか、彼の鋭い足腰の動きに熱狂する若い白人女性たち。現代から見るとまるでコントだ。そんなエルヴィスにも試練が訪れる。人気テレビ番組出演時に、保守的な白人たちからひんしゅくを買わないよう燕尾服を着させられ、踊りを禁じられてしまう。自分らしさを表現できないことに苦悩するエルヴィスだったが、その後、旧友でアフリカ系ミュージシャン、B.B. キングに励まされ、あるコンサートで一大決心をし、保守的な白人のおじ様たちを激怒させる、そして、若い白人女性たちが熱狂する、本来の彼の鋭い踊りを披露。その直後、これもコントみたいだが、エルヴィスは逮捕された挙句に徴兵されてしまう。余談だが、その10数年後にザ・ローリング・ストーンズもアメリカの国民的人気番組エド・サリバンショーで「夜をぶっとばせ」を歌う時にその歌詞の "the night" をわいせつであるという理由で "some time" と歌うように強制されたが、当時のストーンズのミックとキースは、その事が話題になってレコードが売れると喜んでいたとか。ストーンズやビートルズがデビュー後に快進撃を続けられたのは、ロックンロールのパイオニアであるエルヴィスの苦悩や犠牲のおかげとも言えるだろう。まさにエルヴィスは「ロックの神様」の称号にふさわしい人物だ。

エルヴィスを、アメリカ、そして、世界のスーパースターに導いたマネージャー、パーカー大佐の功績は大きい。だが、薬漬けにしてまでエルヴィスを歌わせ続けて、自分は大好きなギャンブルに精を出していた彼は、決して善人ではない。そんな彼が、本作では興味深い人間として描かれている点は嫌いだ。また、大佐の視点ではなく、エルヴィスの父親、もしくは、エルヴィス本人の視点で物語を描いてほしかった。

終盤のエルヴィスの姿が痛々しかったので、観覧後の数日間は気分が重かった。それだけ、エルヴィスの苦悩を見事に演じ切ったオースティン・バトラーとパーカーの狡猾さを絶妙に表出したトム・ハンクスが素晴らしかったという事だろう。パーカー大佐の描かれ方には不満があるが、エルヴィス・プレスリーの伝記映画としては良作だ。

2022年8月10日水曜日

アクトレス~女たちの舞台~

2022年7月、『アクトレス~女たちの舞台~』をテレビ画面にて初観賞した。2014年公開のドラマ映画。主演はジュリエット・ビノシュ。クリステン・スチュワートとクロエ・グレース・モレッツ出演。

20数年前に娘役を演じたある舞台劇の再演で、その娘の母親役を演じる事になった大物ベテラン俳優マリアが、彼女の若いマネージャーのバレンティンとともにその役作りに励み、その娘役を演じるお騒がせな新進気鋭の俳優ジョアンと共演するお話。

役作りをしているマリアに対して物おじせずに自分の意見をはっきり言う、若いクリステンを演じたスチュワート・ヴァレンティンの鋭い演技は、リアルでとても素晴らしかった。二人の役柄への考え方の相違はジェネレーション・ギャップとも言えたが、その言い争いを通してそれぞれの立場が二転三転する様もとてもリアルで、主役を任され続ける俳優さんは、皆、ここまで真摯に役柄と向き合っているのだろうなと思えた。ただ単に撮影前にセリフを丸暗記してリハーサルで監督の意図を確認して本番でのみ真剣に演技するだけの役者は、ずば抜けた演技の才能が無い限り、淘汰されるのだろうな、役者の世界って本当に大変だなと思った。

マリアを演じた主演のジュリエット・ビノシュを初めて観た作品は『存在の耐えられない軽さ』。それまで大抵の西洋人の女性は皆大人びて見えていたので、『パルプ・フィクション』でブルース・ウィリスが演じたボクサーの若い恋人役だったマリア・デ・メディロス、そして、『レインマン』でトム・クルーズが演じた自動車ディーラーのパートナー役だったヴァレリア・ゴリノを見た時と同様に、童顔の彼女の可愛らしさに少し驚いた。だが、よく考えてみると、サリー・フィールド、ダイアン・キートン、そして、キャメロン・ディアスも童顔だし、最近だと、キャリー・マリガンやアナデ・アル・マスもそうだ。童顔美女は日本人女性というイメージを単純に持っていたが、それは私の偏見だった。その後、ジョニー・デップも出演している『ショコラ』で観た彼女は、可愛らしさに加えて大人の落ち着きもあって、いい年の取り方をしているなと思った。本作でも相変わらず可愛らしさを保っていらっしゃり、相変わらず魅力的だった。

クロエ・グレース・モレッツもまた、暴言を吐いたり不倫したりする生意気でお騒がせな若手俳優を好演。

若い二人の俳優はそれぞれ魅力的で存在感もあったが、結局、本作で最も魅せられたのは様々な表情を見せてくれたジュリエット・ビノシェだった。

2022年7月29日金曜日

早熟のアイオワ

2022年7月、『早熟のアイオワ』をTV画面にて初観賞した。2008年公開のドラマ映画。日本公開は2014年。監督および脚本はロリ・ペティ。ペティの少女時代の体験を基にした物語。ジェニファー・ローレンス主演。クロエ・グレース・モレッツ出演。

家族に暴力をふるう父親と別れる事は出来たが、その後、売春宿で売春婦の母と一緒に暮らすことになった3姉妹の、特に、長女アグネスの過酷な一日が描かれている。

私の父は、常日頃から家族を腕力で威嚇して機嫌が悪い時は平気で暴力を振るう人だった。だから、私は自分を不幸だとずっと思っていた。だが、高校時代の友人の父親も似たような人間であった事を知ったり、実家を出て一人暮らしを始めてから出会った様々な方から色々な話を聞いたり、マスコミが報道する幼児虐待の実態を見聞きして、自分より不幸な子供たちが大勢いる事を徐々に知った。そして、本作の3姉妹の長女アグネス。彼女が思春期真っただ中の年頃だった事を考えると、あの暴行事件の被害者になっただけでなく、その直後に母親から慰められる事も無く、逆に冷たくあしらわれたのは本当に悲しい話だ。それでも、その後も堕落する事無く成長した彼女は素晴らしい女性だ。

こういう実話が公になるのは良い事だと思う。自分の子供を愛せない親は確実に存在している。全ての親が彼らの子供たちを心から愛していると盲目的に信じる事は危険だ。その間違った認識のせいで言いたい事を言えない子供たちが大勢いるのが現実。

ジェニファー・ローレンスがアグネスを熱演。監督のペティの少女時代の体験に基づいて作られたその役を見事に演じ切っていた。アグネスの母親サラに関しては、体を売るしかない状況で酒や薬にも溺れていた為、娘たちを深く愛することが出来なかった事への多少の同情の余地はあるものの、人間の本質が露出するのはギリギリの状況の時である事を思うと、残念なお方だ。

正直に言うと、クロエ・グレース・モレッツ見たさで観賞した本作。この2年後に公開された『キック・アス』でのミンディおよびヒットガールを演じた彼女は可愛らしくて最高だった。本作でも、特に、車の中でロックミュージックに合わせて頭を前後に振っているシーンはとても可愛らしかった。だが、本作ではまだ子供だったので、ローレンスの魅力や存在感の方が圧倒的だった。

2022年7月18日月曜日

ブルージャスミン

2022年7月、『ブルージャスミン』をTVにて初観賞。2013年公開のドラマ映画。ウディ・アレン監督作。主演はケイト・ブランシェット。

金持ちの夫のおかげで贅沢な生活をし続けていた、綺麗なだけが取り柄のジャスミンが、夫の逮捕で財産を失った後も何の根拠も無く自分を特別な女と思い込んだまま迷走し続けるお話。

観賞中、あなたとは安っぽい店では飲みたくないの、と言って、毎回、自分好みの比較的高価でおしゃれなお店に行くことを強要してきた女性との嫌な思い出が蘇って気分が悪くなった。綺麗ではあったが、自己中で贅沢好きで話題に乏しかった彼女は、嘘つきな勘違い女ジャスミンにとてもよく似ていた。

クールで知的なイメージを持つケイト・ブランシェットが、そんな中身が空っぽなジャスミンを絶妙に好演。本作でアカデミー賞主演女優賞を受賞している。演技の幅が広い素晴らしい俳優さんだ。『リプリー』や『ギフト』ではそれほど印象に残らなかったブランシェット。その後、『シンデレラ』での意地悪だがどこか魅力的な継母役で興味が湧いて、『オーシャンズ8』でのカッコよさに痺れて好きになった。公開時に観覧した『ナイトメア・アリー』で見せた悪魔の形相にも魅せられた。ルーニー・マーラと共演した『キャロル』での気品が漂う淑女役も素敵だった。そして、アレンの演出で彼女がどんな風に躍動するのか観たかった本作。ウディ・アレンの作品であることを忘れさせる程、彼女の演技は圧倒的で素晴らしかった。出世作『エリザベス』はまだ観ていない。彼女のファンだと公言したかったら、観るべき作品だな。

2022年7月6日水曜日

キャリー

2022年6月、『キャリー』をTV画面にて初観賞。2013年公開のホラー映画。1976年公開の同名映画のリメイク作。原作は1974年に発表されたスティーブン・キングの同名小説。主演はクロエ・グレース・モレッツ。

超能力を持っているものの、日頃から同級生に冷たくあしらわれている内気な少女キャリーが、ひどいいじめを受けた後、ため込んでいた怒りを爆発させるお話。

ホラーだが、キャリーを演じたクロエ・グレース・モレッツが可愛すぎたのでそれほど怖くはなかった。それでも、宗教を妄信している、キャリーの母親を演じたジュリアン・ムーアの狂気には恐ろしさを感じたし、ブチ切れたキャリーの、性根が腐っているかのような意地悪な学友たちへの反撃にはカタルシスを覚えた。そして、最後の二人の美女の対決には観応えがあった。

クロエ・グレース・モレッツ出演作で初めて観たのは2011年公開の『ヒューゴの不思議な発明』。だが、その時は、可愛い娘だなとは思ったものの、それほど印象には残らず、無論、名前も憶えられなかった。彼女を初めて認識したのは、怯える若い女性を好演していた、2018年公開のスリラー映画『グレタ GRETA』。怒りに震えて暴走するキャリーの演技も素晴らしかったが、どちらかと言えば、視聴者を怯えさせたり怖がらせるよりも、怯えたり、怖がる彼女の方が好きだ。

スティーブン・キング原作の映画は多数製作されているが、概ね、駄作だとは思わないものの、あまり好きではない。ただ、『シャイニング』、『アトランティスのこころ』、『ミザリー』、『スタンド・バイ・ミー』等、好きな作品はある。でも、それは、スティーブン・キングが創造した物語と言うよりも、スタンリー・キューブリック、アンソニー・ホプキンス、キャシー・ベイツ、そして、リヴァー・フェニックスといった、それぞれの監督や出演俳優に魅せられた感があり、特に、近年観た『IT/イット "それ" が見えたら、終わり』や『ミスト』はあまり好きにはなれなかった。本作に関しては、クロエ・グレース・モレッツとジュリアン・ムーアの熱演には惹きつけられたものの、作品は普通の面白さだった。本作よりも評価の高い1976年公開の同名映画はシシー・スペイセク主演なので興味深い。スペイセクを初めて観た映画は『ミッシング』。あまり綺麗だとは思わなかったが、とても可愛らしくて魅力的だった。そして、2018年公開の『さらば愛しきアウトロー』では、ご高齢にもかかわらず、変わらず魅力的だった。若い彼女が演じたキャリーもぜひ観たい。

キャリーの味方の一人をアンセル・エルゴートが好演。人気作『ベイビー・ドライバー』で主演している。それを観た時はまあまあの面白さだと感じていたので、その後、世間での評価がものすごく高いことを知った時は驚いた。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』、『ショーシャンクの空に』、そして、『レオン』と同様、世間の評価と自分のそれにとてもギャップを感じる作品の一つだ。彼はクロエ・グレース・モレッツと2017年に公開された『クリミナル・タウン』で再共演している。低評価の作品なので、観賞する機会があったら、期待値低めで観賞に臨みたい。

2022年6月22日水曜日

ゴーン・ガール

2022年6月、『ゴーン・ガール』をTV画面にて初観賞した。2014年公開のミステリー映画。原作はギリアン・フリが2012年に発表した同名小説。監督はデヴィッド・フィンチャー。主演ベン・アフレック。ロザムンド・パイク出演。

失踪した妻エイミーに翻弄される夫ニックのお話。

ニックは、エイミーと結婚して幸せな夫婦生活を送るも、数年後の失業で若干怠惰になった挙げ句、若い女と浮気までしてしまう、どこにでもいそうなごく平凡な中年男。若干男尊女卑の考えを持っているものの、悪人ではない彼。エイミー失踪の数日後に警察から妻殺しの殺人容疑をかけられ、さらに、エイミーが美女で有名人だったこともあり、女性の味方を自認する人気女性キャスターのテレビ番組から容赦のない非難を浴びる。そんなニックをベン・アフレックが好演。

そして、物語が進むにつれて、エイミーの疾走の謎が次第に明らかになっていく。面白いサスペンスだ。

ニックが悪いと思う女性もいるかもしれないが、男なんてこんなもんだよな、と男の私は思ってしまった。そして、全ての女性がそうだとは思わないが、女は恐ろしい、親しくなったら常に気持ちを慮っていなければ、と思った。サイコパスを見分ける術が欲しいとも思ったが、好きになってしまえば、愛は盲目とも言うし、見極められないだろうな。そもそも、そうかもとは夢にも思わないだろうし。

ニックの浮気相手を「若い巨乳のヤリマン」と毒づく場面では可愛げがあって可笑しかったエイミー。男がアレの大きい男に嫉妬するのと同じだな。だが、その点以外は、笑えない密かに恐ろしい女。機嫌が良い時は天使だが、ニックが甲斐性なしになり彼女への態度も変わった途端、その可愛らしい仮面を脱ぎ捨てる様が本当に怖かった。そんな彼女をロザムンド・パイクが怪演。デヴィッド・フィンチャー監督作らしい終盤の修羅場には驚かされた。

パイクを初めて見たのは2021年公開の『パーフェクト・ケア』。どうしようもない悪女を演じていて気分が悪くなったが、本作を先に観ていたら、もう少し楽しめる余裕ができていたかもしれないな。

出演している俳優の演技も素晴らしかったが、監督の演出が冴えわたっている、全編に緊張感が漂う良作。

2022年6月14日火曜日

トップガン マーヴェリック

2022年6月、Movix亀有にて『トップガン マーヴェリック』を初観賞した。2022年公開のアクション映画。1986年に公開された『トップガン』の続編。両作ともにトム・クルーズ主演。

若い頃のトム・クルーズが好きではなかったので長い間観ていなかった前作。本作をより楽しむために、その公開直前の2022年5月にTV画面で観賞。36年前の作品なので所々古臭く感じたが、若い優秀なパイロット同士の友情やら親友の死やら、そして、久しぶりに見たメグ・ライアンの可愛らしさやらで、想像以上に観応えがあった。

優秀なパイロットをさらに訓練する学校、トップガンの卒業生でもあり元教官でもある、トム・クルーズ演じるマーヴェリックが、再び教官として復帰して彼の教え子たちと共にならず者国家と闘うお話。

前作を映画館でご覧になっていたファンの方々ほどの思い入れが無いので、マッハ10以上の記録を出すためにテスト・パイロットのマーヴェリックが無茶をする冒頭の場面では、エド・ハリスが現れた時に大好きな映画『ライトスタッフ』を思い出していた。ハリスではなくサム・シェパードだったら完璧なキャスティングだったが、もう亡くなっていらっしゃるので仕方がないな。

トム・クルーズの肉体美は相変わらずだった。若いパイロットたちに混じって海辺でアメフトに興じるマーヴェリックの水着姿は他の若者たちのそれと引けを取らないほど若々しかった。公開時に劇場観覧した『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』では走りまくっていたトム様。『ミッション:インポッシブル』最新作でもまた素晴らしいアクションを披露してくれるだろう。死なない程度に頑張って頂きたい。

最新のアクション映画の映像に見慣れていたので、前作のドッグファイトには物足りなさを感じてしまったが、本作のそれは臨場感がハンパなくてとても素晴らしかった。観賞中、IMAXで観るべきだったと悔やみもした。

前作は音楽も評価されているが、私には懐かしさしか感じられなかった。だが、本作で聞こえてきたデヴィッド・ボウイの「レッツ・ダンス」やT・レックスの「ゲット・イット・オン」には鳥肌が立った。そして、極めつけは戦闘機の飛行中に流れたザ・フーの「無法の世界」のシンセサイザー。3曲とも前作公開前の発表曲。そんな古い曲たちが選ばれた本作の音楽担当には新たにレディ・ガガが加わっている。『ハウス・オブ・グッチ』では、歌手を本業としている割にはなかなかの演技を披露していたガガ様。彼女の好みが自分の好みと似ているのかもしれないと思えて嬉しい。

マーヴェリックと、前作で彼の親友だったグースの息子であるルースターとの確執や、ルースターと、彼のライバルでニヤケ顔のハングマンとの友情等、ドラマとしても観応え十分な素晴らしい超娯楽大作。

2022年6月8日水曜日

ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密

2022年5月、『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』をTV画面にて初観賞。2019年公開のサスペンス映画。主演はアル・デ・アルマ。名探偵役にダニエル・クレイグ。

アガサ・クリスティー原作の『オリエント急行殺人事件』や『ナイル殺人事件』のように終盤で事件の謎が明らかになるお話だろうと思って観賞に臨んだが、実際には、中盤から事の真相が徐々に明らかになる、そして、全般的に、若干コメディっぽい作品だった。

ある高齢の人気作家が亡くなり、彼の遺産の相続を巡る彼の家族たちの醜い争いに彼の看護師が巻き込まれるお話。

遺産を相続するために躍起になる人たちを見ながら横溝正史原作の映画『犬神家の一族』を連想して、お金が絡むと人が醜くなってしまうのは万国共通だなと思った。ま、その争いに勝てば莫大な金額を手にすることができるとなると人が変わってしまうのは仕方がないかなとも思うが。

そんな争いに巻き込まれる、その逝去した高名な作家の看護師をアル・デ・アルマスが好演。ただ、嘘をつくと吐いてしまうという癖には苦笑してしまった。また、正直、もし英語が流暢だったら、日本人俳優の有村架純の方が適役ではないかと思ったりもしたが、全編に渡って出ている童顔で可愛いアルマスは魅力的だった。彼女を初めて見たのは『ブレードランナー2049』でのAI役。主演のライアン・ゴズリングよりも目を惹く存在だった。そして、007シリーズ最新作『ノー・タイム・トゥ・ダイ』でのCIAエージェント役は妖艶で愛らしくて最高だった。

その醜い遺産相続争いを見守る名探偵を演じているのがダニエル・クレイグ。若干コミカルな演技と独特な雰囲気には魅せられたが、正直、ジェームズ・ボンドのイメージがまだ強く残っている為、違和感も覚えた。

有名俳優が多数出演しているため、観る度に感じ方が変わりそうな、何度も観賞できそうな良作。続編が製作中らしい。公開される頃には、ジェームズ・ボンドではないダニエル・クレイグへの違和感が無くなっていてほしいな。

2022年6月2日木曜日

映画『ドラゴン・タトゥーの女』(2011年)

2022年5月、『ドラゴン・タトゥーの女』をTV画面にて初観賞した。サスペンス映画。2009年に公開されたスウェーデン映画『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』のリメイクで、原作は2005年に出版されたスティーグ・ラーソンの推理小説『ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女』。

ある大物実業家から40年前に行方不明になった彼の姪について調査するよう依頼された雑誌『ミレニアム』記者ミカエルが、天才ハッカーのリスベットと共にその失踪事件の解明を目指して奮闘するお話。

ダニエル・クレイグ主演との事で観る気になったが、痩せぎすで黒ずくめのリスベットを演じたルーニー・マーラの体当たり演技に度肝を抜かれた。ルーニーに関しては、『ドント・ウォーリー』や『キャロル』等で可愛い女性を演じていた彼女しか知らずにいて、本作であんな酷い目に遭う役を既に演じていたとは夢にも思っていなかったので、また、可憐なお顔でいらっしゃるのにあんな辱めを受ける役なんてよく引き受けたな、と驚いた。そして、ラストの切なさの滲んだカッコ良さにシビれた。

クレイグはと言えば、ジェームズ・ボンド役の彼しか知らなかった為、本作でのミカエル役は少し物足りなかったが、超人的なタフネスさを持ち合わせていない人間なんてあんなものだ。ボンドではない彼が出演している作品をあと何本か観れば、身体能力が普通の男性役の彼にも慣れるだろう。

助演では、存在感のあるクリストファー・プラマーとステラン・スカルスガルドにそれぞれ魅せられた。そして、今回、スカルスガルドが『グッド・ウィル・ハンティング』であの長身痩躯の数学教授を演じていた事に初めて気づいた。『ボルグ/マッケンロー』にも出ているが、年齢を重ねて貫録が増したようだ。

真実が明らかになるにつれて気分が悪くなる物語。

終盤の観賞中、ジャック・ニコルソン主演の『チャイナタウン』を思い出した。あのロマン・ポランスキー監督作同様、下衆な話が盛り込まれているものの、全編に緊張感が漂うスタイリッシュな良作。

デヴィッド・フィンチャー監督作も一味違う。

2022年5月18日水曜日

映画『キャロル』(2015年)

2022年5月、『キャロル』をTV画面にて初観賞。ドラマ映画。トッド・ヘインズ監督作。パトリシア・ハイスミスが1952年に発表した同名小説が原作。因みに、ハイスミスは、1960年公開のアラン・ドロン主演のフランス・イタリア映画『太陽がいっぱい』や1999年公開のマット・デイモンが主演した『リプリー』の原作小説『太陽がいっぱい』の著者でもある。2冊とも主人公は同性愛者。

先月観覧した『ナイトメア・アリー』にて、綺麗だが悪魔のような表情も見せたケイト・ブランシェットと世の男たちが恋焦がれる理想的な可愛い女性を演じたルーニー・マーラが、本作でダブル主演していると知り、早速観賞した。

彼氏がいる若くて可愛いデパートの店員テレーズが夫と娘を持つ綺麗で気品のある淑女キャロルと出会ってしまうお話。

レズビアンのロマンスが描かれているとは知らなかったので2人の女性がお互いに恋愛感情を持ち始めた時は若干戸惑ったが、それまでにレズビアンの恋愛が描かれた『ブックスマート』、『ザ・プロム』、そして、『燃ゆる女の肖像』を観ていたので動揺することはなかった。そして、2人の関係を見ながら、女同士の恋愛も男女のそれも本質的には変わらないなあと改めて感じた。2人の愛の深さを見せる必然性があったにせよ、2人が枕を交わす夜が濃密に描写されていた事には若干驚かされもしたが、そのベッドシーンを演じたお二人は本当に美しかった。

観賞中、自分の考えを押しつけがちな男たちの描かれ方から、女性監督作っぽいなと感じたが、観賞後に調べてみると監督は男性のトッド・ヘインズ。だが、ゲイであることをカミングアウトしているお方だった。社会が男性優位から僅かだが少しずつ男女平等社会に移行しているこのご時世。時代に置き去りにされぬよう公平な目を持ちたいものだ。

2人の美女、ケイト・ブランシェットとルーニー・マーラの魅力満載の、素敵で切ない恋愛映画。

2022年5月12日木曜日

映画『グッバイ、リチャード!』

2020年10月、キネマ旬報シアターにて『グッバイ、リチャード!』を初観覧。2018年公開のコメディドラマ。ジョニー・デップ主演。2021年9月に劇場観覧した『MINAMATA』でのデップや、その翌月に観覧した『アナザーラウンド』でマッツ・ミケルセンが演じた冴えない高校教師とその親友であり同僚でもある3人との友情物語を観て、本作でのデップと彼が演じた教師とその同僚との友情物語をまた観たくなり、観賞。それ以降も何度か観ているお気に入りの作品。

肺がんと診断され余命宣告を受けた中年教師リチャードのその後の生き様が描かれている。

自分の残された時間を医者から知らされたその日の夜の家族の団らんで一人娘からレズである事をカミングアウトされるリチャード。彼の妻は一時的なものと一笑に付すもリチャードは娘に理解を示す。もし死期が近づいていなかったら、彼は、妻に同調するか、無関心でいるか、世間体を気にして黙っているように娘に諭す父親であっただろう。その後、妻から不倫をしていると告げられるも、特に怒るわけでもなく、その相手が普段から彼が軽蔑している俗物の学長であることを知って呆れるのみ。結局、自分が末期ガンだと初めて伝えたのは同僚の親友だった。

学校でのリチャードは、一見投げやりだが、『いまを生きる』のロビン・ウィリアムズを彷彿とさせる魂の授業を始める。フェミニストの生徒を邪険に扱う様が愉快。その授業中に酒を飲んだりマリファナをやる姿は、『アナザーラウンド』でマッツ様が演じた、酒の助けを借りながら生徒を熱中させる中年教師を連想させる。そういう授業は、テストの為の退屈な講義よりも断然刺激的で、若い生徒たちの為にもなると思う。

ジョニー・デップがそんなリチャードを全編に渡って、時にコミカルに、そして、魅力たっぷりに演じている。くたびれた中年役なのに本当にカッコいい。

そして、本作は、一人で向き合うにはすごくしんどい、「死」の観念について悲壮感をあまり覚えずに考えることができる素晴らしい作品だ。

2022年5月5日木曜日

映画『007 スペクター』

2021年10月、TV画面にて『007 スペクター』を初観賞。その後も何度か観ていて最近再観賞した2015年公開のスパイ・アクション映画。ダニエル・クレイグ主演の007シリーズ4作目。本作と続編にレア・セドゥ出演。

MI6の凄腕エージェント、ジェームズ・ボンドが昔の敵の娘マドレーヌと恋に落ちつつ、悪の組織スペクターと闘うお話。

ピクサー映画『リメンバー・ミー』でも描かれていたメキシコの「死者の日」から物語は始まる。

そのメキシコシティにおける祝祭の影で活動するジェームズ・ボンド。その後も、ローマやオーストリアにて前作のMが残した情報を基に秘密組織に挑み続ける。そして、その過程で運命の女性マドレーヌと出会う。

ボンドを演じたダニエル・クレイグが実年齢よりも若々しく見えてクールで本当にカッコいい。マドレーヌを演じたレア・セドゥもまた美しくて妖艶で、前作でMを演じたジュディ・デンチとは違って銃を撃つ姿も様になっていた。年齢差があるお二人だがお似合いのカップルだ。

そして、次作を観るまでは、本作で完結しても良かったのではと思えるエンディングだった。

レア・セドゥを初めて観たのは『ミッション:インポッシブル』の3作目。綺麗と言うよりもミステリアスな若いフランス人という感じだったが、数カ月前に観覧した『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』で披露したヌードはただただ美しかった。もちろん、本作でも本当に魅力的だった。

Mを演じたのはレイフ・ファインズ。本作でクールに暴れ回っているダニエル・クレイグに感化されたのか、6年後、『キングスマン:ファースト・エージェント』で華麗なスタントを披露している。英国紳士が様になる見た目なんだから年齢的にも無理してアクションなんかこなさなくてもいいのにと思ったりするが、動き回るのが好きな性分なんだろうな。

2022年5月2日月曜日

映画『スパイダーマン』

『スパイダーマン』を初めて観たのは2005年頃。2002年公開のスーパーヒーロー映画。監督はサム・ライミ。

公開当時、映画監督の井筒和幸さんがTVで絶賛していたが、そんなに凄い作品なのかなと疑っていた。

数年後、TV画面にて初観賞。当時はアクション映画をあまり好きではなかったが、面白かった。主演のトビー・マグワイアに興味を持った作品でもある。

初観賞後、立て続けに『サイダーハウス・ルール』と『シー・ビスケット』を観賞。本シリーズ同様、今でも好きな作品群だ。

そして、2022年1月に観たスパイダーマンシリーズの最新作『ノー・ウェイ・ホーム』が素晴らしかったので、もう一度シリーズを通して観直したくなり何度目かの再観賞。

特殊な蜘蛛に刺された高校生のピーター・パーカーが人間離れをした身体能力を手に入れてスパイダーマンとして街の悪者を退治するお話。

本作を観る度に冒頭のダサすぎるパーカーに違和感を覚える。そして、そのダサさと能力を身につけて変わってしまった彼とのギャップがあり過ぎるにもかかわらず、その事に驚きつつもそこまで深刻に騒いでいない彼のクラスメートたちや友人たちに不自然さを感じる。ま、コミックが原作だし、娯楽作品なのだから、その程度の事に目くじらを立てても仕方がないが。トビー・マグワイアが演じたのが、超ハンサムではないがどこか魅力的で頭脳明晰なピーター。そんな彼が想いを寄せるメリー・ジェーン役のキルスティン・ダンストは普通の美人。だから、なぜこんな大作のヒロイン役に抜擢されたのだろうと最初は思っていた。次作以降はもっと綺麗になっているので、彼女をキャスティングした方に先見の明があったという事だろう。もしくは、私に女性を見る目が無いのか、彼女の容姿が西洋人好みなのだろう。

ピーターとMJの初々しいロマンス、そして、その二人の友人ハリーが加わった友情物語が微笑ましい。

また、最新作『ノー・ウェイ・ホーム』のテーマにもなっているフレーズ「大いなる力には大いなる責任が伴う」を、ピーターの叔父ベンが彼に諭すように伝えているシーンは、初観賞時は何とも思わなかったが、最新作観賞後の今回は、緊張感を持ってしっかりと観た。感動的な瞬間だ。

悪役は名優ウィレム・デフォー。見所満載の娯楽大作。


スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム

2022年4月25日月曜日

映画『シャドウ・イン・クラウド』

2022年4月、『シャドウ・イン・クラウド』を合計3回観覧した。2020年公開のアクション映画。日本公開は2022年4月。クロエ・グレース・モレッツ主演。

第二次世界大戦時のニュージーランドにて、若い女性兵士モードが、軍の機密情報が入った鞄を持って出発間際の軍用機に乗り込み、その後、乗組員の男たちと共に様々な困難に直面し奮闘するお話。

モードを演じた綺麗で可愛らしいクロエ・グレース・モレッツの、表現力豊かな素晴らしい演技と体を張ったアクションが全編で堪能できる、私のような彼女のファンへのプレゼントみたいな作品だ。男たちの猥談を軽くかわしつつ、戦闘になった際には男勝りの活躍を見せて、死傷者続出後に弱気になった男たちを叱咤激励しながら最後まで奮闘する姿は正に戦う天使だった。そして、最後に見せた母性。あのヒットガールを演じていた彼女はもう立派な大人の女性になったんだな、としみじみ思った。

初観覧時に突然現れたグレムリンを見た時は若干違和感を覚えた。西洋では機械に悪戯をする妖精として有名らしい。それでも、何か不自然だなと思ったが、本作は典型的なB級のローラーコースタームービー。そんな些細な事を気にするのは野暮な話だ、余計な事を考えずに楽しんだ者勝ちの83分だ。2回目以降はそう思いながら観覧した。

所々でフェミニズムを感じる作風。モードに対する下衆な男たちの卑猥な冗談を聞きながら、男社会の中で揉まれる少数派の女性たちの大変さを思った。これまでにも、『ハスラーズ』、『ストーリー・オブ・マイライフ』、『プロミシング・ヤング・ウーマン』といった女性が監督した作品に男社会の歪な部分を気付かされたが、本作でも色々と考えさせられた。クロエのみならず監督のロザンヌ・リャンの次回作にも注目したい。

2022年4月20日水曜日

映画『THE BATMAN-ザ・バットマン-』

2022年3月、『THE BATMAN-ザ・バットマン-』を初観覧。2022年公開のスーパーヒーロー映画。原作はDCコミックスの『バットマン』。ロバート・パティンソン主演。

スーパーヒーローのバットマンが、彼が住む架空都市ゴッサム・シティで起きた連続殺人事件を解決するために奔走するお話。

復讐について考えさせられた。

復讐は愚かだと犠牲者に誰が言えるのだろうか。そして、復讐心を生まない人間社会の形成は多分不可能だ。もし私がその当事者になったら、相手に復讐するための完全犯罪を考え続けることに集中して、その間に私の復讐心が自然と消えるのを祈るだろう。だが、正直、実際に被害者になったら、自分が何をしでかすかは分からない。

ロバート・パティンソンがまだ若いブルース・ウェインとバットマンを繊細に演じ分けていた。マイケル・キートンやクリスチャン・ベールが演じた彼らよりも好きだ。だが、強すぎたり大人過ぎたりするのでバットマン自体はスパイダーマンほど好きではない。

ジャック・ニコルソン、ヒース・レジャー、そして、ホアキン・フェニックスが演じたキャラクター、ジョーカーの方が好きだ。ゴッサム・シティの雰囲気に合う悪党だ。

その上、今回、頭に触覚がついているそのコスチュームが、長年のファンの方は見慣れてしまって何とも思わないのかもしれないが、可笑しくて仕方がなかった。特に、警察が現場検証をしている場所に彼が真面目な顔で現れた時、お笑い番組の観過ぎかもだが、警官たちがその扮装をなぜイジらないのかとさえ思った。可笑しいと言えば、キャットウーマンの鼠小僧のようなマスクもまた、日本人特有の感覚かもしれないが、可笑しすぎて、そして、ダサすぎて白けてしまった。やはり、ミシェル・ファイファーも演じていたが、キャットウーマンと言えば、ハル・ベリーだ。

3時間を超える上映時間は私には長すぎたが、作品自体はよくできたスーパーヒーロー物であると同時に上質のサスペンス映画で、アクション作品としても素晴らしいと思う。そして、最後のバットマンの選択は感動的だった。スパイダーマンの「大いなる力には大いなる責任が伴う」に通じるスーパーヒーローとしての責任感が滲んでいた。

2022年4月14日木曜日

映画『007 スカイフォール』

2021年10月、『007 スカイフォール』をTVにて初観賞。その後も時折観賞。2012年公開のスパイ・アクション映画。ダニエル・クレイグ版007の3作目。

世界各国のテロ組織に潜入しているNATOの工作員の情報が収められたPCのハードディスクが何者かに盗まれて、その何者かにMI6のボスであるMが狙われるお話。

序盤から非情な采配を取るM。その結果、ジェームズ・ボンドが味方の銃弾を受けて高所から落下して行方不明になる。奇跡的に生き延びたボンドはそのまま失踪するが、その後、MI6の本部が爆破された事を知り、Mの元に駆け付けて職務に復帰する。敵のMへの執着心はすさまじく、ボンドは最終的にスカイフォールと呼ばれる彼の生家にMを匿い、執拗に彼女を付け狙う敵との最後の決戦に挑む。

本作も本格的なアクションシーン満載。終盤の闘いではMも自ら銃を手に取る。そんな彼女が「銃はヘタなの」と話す様が愛らしい。

『ゴールデンアイ』から8作続けてMを演じているジュディ・デンチ。本作のボンドガールは彼女だろう。他にも2人の若い美女が登場するが、そして、デンチは小太りの中年女性ではあるが、彼女の持つ存在感が圧倒的で若い2人の印象は薄い。その上、彼女が演じるMの毅然とした姿勢や物腰には若い女性には醸し出せない凄みや落ち着いた雰囲気があり、それがまたチャーミングでもある。

また、過去に007を演じていてもおかしくなかった、風貌がまさに英国紳士のレイフ・ファインズが、Mに引退を勧める英国政府の高官として出演。そして、『ノーカントリー』での怪演が有名なハビエル・バルデルが悪役で出演。脇役陣に存在感がある為、他の作品と比べるとボンドの印象が若干薄めなアクション映画の良作。

2022年4月13日水曜日

映画『ナイル殺人事件』

2022年3月、『ナイル殺人事件』を初観覧。2022年公開のミステリー映画。アガサ・クリスティーが1937年に発表した推理小説『ナイルに死す』が原作。監督およびポアロ警部役はケネス・ブレナー。

豪華客船の中で起きた殺人事件の謎に名探偵ポアロが挑むお話。

2021年8月にTV画面で初観賞した同じくアガサ・クリスティー原作で監督およびポアロ警部役がケネス・ブレナーの映画『オリエント急行殺人事件』はジョニー・デップ、デイジー・リドリー、ミシェル・ファイファー等の有名俳優たちが多数出演していて観応えがあったが、原作既読か1974年公開の旧作を観ていたら感想は違っていたかもしれないものの、物語の結末が若干物足りなかった。だから、次作でもある本作を劇場観覧する気は無かった。しかし、今をときめく美女ガル・ガドットが出演すると知って、『ワンダーウーマン 1984』以来となる目の保養の為に映画館まで足を運んだ。

ガルは本当に美しかった。それでも、やはり、本作も前作と同様に謎が多過ぎたため、仕事帰りで疲れが残っていたこともあり、特に殺人が起こった後は、話の展開についていくのがやっとで俳優たちの演技を上の空で見ていたため、ポアロ警部が事件の謎を解き始めてからはただただスクリーンを眺めるだけだった。観客が原作や旧作などで大まかな粗筋を知っているという前提で製作された作品でもあるので、前知識無しで初観賞に挑んでしまった私が作品を心から楽しめなかった事は仕方がないと思う。そして、複雑な話で有名俳優たちが多数出演しているため、本作は何度も楽しめる作品だとも言える。ただ、今回の観覧で、私は、ミステリーをそれほど好きではない、そして、映画館で観賞する際はなるべく余計な事を考えずに俳優たちの演技の妙を楽しみたい人間だと気づいた。そもそも、私は、どうせ種があるんだろ、と思いながら手品を白けた目で見てしまう人間だ。

ガル以外で印象に残ったのは、まず、ローズ・レスリー。控え目だが存在感のある美女。ガルを引き立てる役柄に徹している様に好感が持てた。そして、アネット・ベ二ング。『アメリカン・ビューティ』に出演していた時は綺麗な中年女性という感じだったが、本作でのお婆様役ぶりには驚かされた。正直、見るのが久しぶりだったこともあり、最初は、彼女だと気づけなかった。ベニング姐さんもついにお婆ちゃんを演じるようになったのかと感慨深くなり、鏡の中の自分がオッサンになってしまっているのも仕方がない事だなと納得した。それにしても、スキャンダルで俳優業を続けるのが難しくなったと聞いていたアーミー・ハマーが出ている事に驚いた。禊が済んだという事なのかな。彼が出演していた大好きなスパイ映画『コードネーム U.N.C.L.E.』の続編は製作されるのかな。

前述した通り、本作の映画館での観賞は満足いくものではなかった。良作ではあったと思う。いつか、家でくつろぎながら、リモコン片手に早戻ししながら、ゆっくりじっくり再観賞できれば好きになれそうな気はする。

2022年4月6日水曜日

映画『パワー・オブ・ザ・ドック』

2022年3月、キネマ旬報シアターにて『パワー・オブ・ザ・ドック』を初観覧。2021年公開のドラマ映画。原作は1967年に発表されたトーマス・サヴェージの同名小説。舞台は1920年代後半の米国モンタナ州。監督はジェーン・カンピオン。ベネディクト・カンバーバッチ主演。

LGBTの方々が不用意に自身の秘密を明かせない、まだ保守的な時代を生きた2人の男の物語。

『ジョジョ・ラビット』や『ラストナイト・イン・ソーホー』でその美しさに見惚れてしまったトーマシン・マッケンジー出演と知り、また、『スパイダーマン』のメリー・ジェーン役でお馴染みだったキルティン・ダンストの現在も見たくなり観覧に臨んだが、トーマシンに関しては、出演場面が短かった『オールド』よりもさらに登場時間が短かったため、がっかりした。ダンストは、義理の兄からの精神的な嫌がらせで追いつめられる人妻役。しかし、ベネディクト・カンバーバッチの存在感が圧倒的だったので、途中から、その2人の事はどうでもよくなってしまった。カンバーバッチの演技は本当に素晴らしかった。一瞬たりとも目が離せなかった。納得のアカデミー賞主演男優賞ノミネート。オスカーは『ドリームプラン』主演のウィル・スミスが獲得したが、私は、カンバーバッチの演技の方が好きだった。また、カンバーバッチが演じたマッチョな男の描写が極めて繊細だったのは、本作の監督が女性だったからだろう。女目線で見る男の姿には、男が逆に気づかされる点が多い。

それぞれゲイとサイコパスである2人が引き起こした事件を観ながら、勇気ある方々が声を上げ始めたおかげで昔よりも少しはマシになったこの日本ですらあの2人が起こしたような悲劇が今もどこかで起きている、と思って憂鬱になった。

LGBTQの問題は、社会全体が変わらないと解決しない。本来の自分を出せないまま抑圧されて生きている人々が自分をさらけ出して伸び伸びと生きられる事はその社会にとっても有益なはずだが、そんな事を絶対に認めたくない、自身の古い固定観念を変えられない人間はまだまだ大勢いる。

時代は簡単には変わらないだろう。それでも、このような映画は、微力だが、私たちの社会にとって有益だ。

2022年4月1日金曜日

映画『ドリームプラン』

『ドリームプラン』。2021年公開のドラマ映画。実話。ウィル・スミス主演。

世界的に有名なプロテニス・プレイヤーのウィリアムズ姉妹を育て上げた彼女たちの父親リチャード・ウィリアムズのお話。

ウィル・スミスの自分の信念を曲げない頑固親父役に魅せられた。陽気でハンサムなイメージの彼が、見た目が残念な中年男性を演じていた事に少し驚いたが、彼の持ち味でもある陽気で爽やかなイメージを抑えたその演技は素晴らしかった。

彼の作品で一番好きなのはマイケル・マン監督作の『ALI アリ』。その役柄でアカデミー賞主演男優賞にもノミネートされていた。そして、2022年、本作で主演男優としてオスカーを初受賞。

その授賞式で、長編ドキュメンタリー映画賞のプレゼンターを任されたクリス・ロックがスピーチ中にスミスの妻の容姿を揶揄した。最初は笑っていたスミスだったが、突然、立ち上がって壇上に歩み寄りロックを平手打ち。席に戻ったスミスがロックに向かって大声で「お前のクソッタレな口から俺の妻の名前を出すな!」と叫ぶと、ロックは「もう言わないよ」とマイクを使って返答。コメディアンとしてきわどいスピーチを期待されていたロックは、同じアフリカ系のスミスなら遺憾の意を後で示すくらいで済ませてくれるだろうと計算していたのだろうし、スミスがあそこまで怒りを露わにするとは思っていなかっただろう。

なぜ、スミスがあの晴れの舞台であんな事をしてしまったのか。妻への強い愛か、何もしなかったら後で妻に怒られるのが怖かったからか、はたまた、あれは、アメリカでまことしやかにささやかれている、茶番劇だったのか。写真ではロックの顔が平手打ちされたかのように見えるが、動画でよく確認すると、スミスはロックの左胸を平手打ちしている。もし、スミスが拳でロックの顔を殴っていたらやり過ぎだったと思うが、胸をはたいただけなので、個人的には、あれが妻への強い愛から生じたのならば、許されない行動ではないと思うし、また、その男らしさで彼を見直した。暴力はいけないとよく言われるが、こっちの怒りの度合いが分からない相手にはある程度の行動は仕方がない。

その後、彼自身の主演男優賞受賞のスピーチで「デンゼル・ワシントンが『最高の瞬間の時こそ気をつけろ。悪魔が忍び寄るのはそんな時だ』と先ほど話してくれた」と言っていた。アフリカ系の方々は、ラテン系の方々同様、軽くて陽気過ぎる気質の方が多いので、内気な私は劣等感を覚えるため、大ファンのアフリカ系俳優は少ない。ウィル・スミスも、本作の演技や今回の立ち居振る舞いで好感を持ったが、それまではあまり好きな俳優さんではなかった。しかし、人格者というイメージもあるデンゼル・ワシントンは好きだ。そのエピソードを知った時はさすがデンゼルと思った。自分にもそんな瞬間が来たら気を付けよう。因みに、スミスのオスカーはあの平手打ちではく奪される可能性があるらしい。世知辛い世の中だ。女性が同じ事をしても、そんな展開にはならないのでは。

観覧後、気になって主人公のリチャード・ウィリアムズさんについて調べてみたら、映画ではかなり美化されているんだろうな、と感じる人生を歩まれていた。また、ウィリアムズ姉妹はその身体能力と母のオラシーンの存在だけでもスーパースターになれたかもな、でも、当時は今以上に男社会だっただろうからリチャードの存在はやはり必要だっただろうな、などと考えさせられた。ま、ここで想像や仮定の話をしても仕方がない。映画に演出は付き物だし。

淡々と物語が進む展開。劇的な場面は少な目。じんわりと感動した。印象的だったのは、リチャードが『シンデレラ』を娘たちに観せて謙虚さの重要性を説く場面。期待していたほど人種差別問題に触れていなかったので若干拍子抜けもしたが、良いドラマ映画であることは確かだ。

2022年3月30日水曜日

スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム

2022年1月、『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』を初観覧。2021年公開のスーパーヒーロー映画。トム・ホランド主演の『スパイダーマン』の3作目。

1作目の『ホームカミング』をTV画面で観た時にトビー・マグワイアの『スパイダーマン』シリーズほどには面白く感じなかったので、本作の映画館での観覧は見送ろうと思っていたが、公開後に絶賛していた方々が大勢いらっしゃったので観る気になった。そして、噂通り、最高の作品だった。

物語は前作『ファー・フロム・ホーム』の直後から始まる。スパイダーマンであることを世間にばらされた高校生ピーター・パーカーの青春とヒーローとして彼の仲間たちと共に悪者たちと闘う姿が描かれている。

前作を観ていなかったので、よく分からなかった点があったが、それほど複雑でもなかったため、冒頭から楽しめた。ミスター・ストレンジの事も知らなかったので、彼を演じたベネディクト・カンバーバッチが登場した時は、その出で立ちが派手過ぎて、また、2021年10月に観覧した『クーリエ:最高機密の運び屋』での一般市民の役柄と違い過ぎて笑ってしまった。出落ちかと思っていたが終盤で重要な役割も果たしていた彼。演技はさすがだった。観賞後、他のMCU作品にも出ているキャラクターだと知ったが、今のところ、その役にそこまで興味は湧いていない。彼の演技は『パワー・オブ・ザ・ドック』のようなドラマ映画で観たい。

終盤で、ハッピーの存在感だけが薄かったなと思い返していたら、最後に彼を演じていたジョン・ファブローが渋い演技を決めていた。主要な登場人物のほとんどに見せ場がある、アクションだけではない、良質なドラマ映画だ。

ミスター・ストレンジの出で立ちと同様に笑ってしまったのはマルチバースの存在。観覧後、MCUは無限にこのシリーズの作品を生み出す術を既に手に入れていたんだなと感心すると同時に、がめつい商売根性だ、と笑ってしまった。

この物語のテーマは、トビー・マグワイアの『スパイダーマン』でベンおじさんが、そして、本作でメイおばさんがピーターに諭すように言っていた「大いなる力には大いなる責任が伴う」。私にはそんな大いなる力は無い。凡人でよかった。

特に魅せられたのは、ピーター・パーカーとスパイダーマンを演じた、憂いが滲んだ優し気な、そして、少年っぽさが残っている純粋そうなトム・ホランドの表情。大人気であることに納得。

観賞中に悔んだのは、前作だけでなく、『アメイジング・スパイダーマン』シリーズや、トム・ホランドが演じるスパイダーマンが出ているMCU作品をほとんど観ていなかった事。観覧後、一通り足早にそれらを観て、翌月、IMAX劇場で本作を再観覧。初観賞時以上に感動した。特に異世界から現れた盟友たちとの会話はずっと聞いていたかったし、最後の別れが切なかった。

2022年3月27日日曜日

コーダ あいのうた

2022年2月、『コーダ あいのうた』を初観覧。2021年公開の青春映画。2014年公開のフランス映画『エール』のリメイク。

ろう者の家庭で生まれ育った末娘で健常者のルビーの青春。

感涙した。近年では、『ボヘミアン・ラプソディ』、『グレイテスト・ショーマン』、および、『カセットテープ・ダイアリーズ』でもしたが、それ以来だった。ルビーを演じたエミリア・ジョーンズの歌唱、特に手話を交えたそれには本当に感動した。

登場人物で身体障碍者が出てくるとなると、偽善っぽい物語になっているのではという懸念があって毎回観るのに二の足を踏むが、本作は日ごろから意見を参考にしている様々な方が絶賛していたので、大きなスクリーンで観るべき作品だと感じて映画館に足を運んだ。

観賞前は、エル・ファニング主演の『ティーン・スピリット』のような展開を想像していたが、より現実的な物語だった。そして、正直、終盤前までの展開は予想を超える事はなかった。なんであんなに称賛されていたのかな、期待外れだったな、と思い始めた時、ルビーの合唱団の発表会が始まって私の好きなデヴィット・ボウイの「スターマン」を彼女たちが歌い出した。名曲は時を超えるなあ、と呑気に考えながら彼女たちが楽しそうに歌う姿と彼女を見つめる父親を眺めていた時、突然、涙がこぼれた。その瞬間、そんな自分に戸惑ったが、その後の怒涛の展開で涙が止まらなくなった。心が洗われた。

「スターマン」以外では、ザ・クラッシュの「アイ・フォウト・ザ・ロウ」が流れ出した時に楽しくなった。セックス・ピストルズは大好きだが、ザ・クラッシュやグリーン・デイはあまり好きにはなれなかったので、私はパンクロック・ファンではないと思っていたが、不意に耳にしたその曲はカッコよかった。好きになるきっかけなんてそんなものなんだろうな。

主演のエミリア・ジョーンズはそんなに綺麗だとは思わなかったが、とても魅力的だった。特に、彼女が演じたルビーが想いを寄せる男の子に対する態度は、本当にいじらしくて可愛らしかった。

本作は、2022年のアカデミー賞作品賞にノミネートされているらしい。本作か『パワー・オブ・ザ・ドック』が受賞してくれたら嬉しいな。

2022年3月18日金曜日

ゴーストバスターズ/アフターライフ

2022年2月、『ゴーストバスターズ/アフターライフ』を初観覧。2021年公開のコメディ・アクション映画。『ゴーストバスターズ』シリーズの4作目。2016年に公開された3作目のリブート版ではなく1989年公開の2作目『ゴーストバスターズ2』の続編。

1作目はもう何度も観ている名作。私の好きなメリッサ・マッカーシーが出ているので、そして、1作目は特殊効果の映像が少し古く感じるので、一番好きなのは3作目だった。それでも、一番見てて楽しいのは1作目のビル・マーレイの演技だ。本作観賞前、2作目はヒット作の続編にありがちな駄作だと決めつけていて未観だった。観賞中、その事を後悔した。

マッケナ・グレイス主演。

1980年代のニューヨークで活躍したゴーストバスターズを祖父に持つ孫たちとその友人たちで結成された新ゴーストバスターズが、オクラホマ州の田舎町でゴーストたちと戦うお話。

主人公は、故ハロルド・ライミスが演じていた旧ゴーストバスターズの一員スペングラー教授の孫娘フィービー。最初は彼女を男の子だと思っていたが、自分の祖父の真実を知るにつれて次第に生き生きし出して可愛らしくなっていく様を見ながら、女の子だと気づいた。マッケナ・グレイスがそんな彼女を可愛らしくも凛々しく演じていた。

そして、フィービーの兄トレヴァーを演じたのは、『IT/イット "それ"が見えたら、終わり。』でおしゃべりな少年を演じていたフィン・ウルフハード。ティモシー・シャラメを連想する風貌。今時の美男子だ。

その兄妹とそのそれぞれの親友たちで4人組の新ゴーストバスターズを結成。フィービーの親友はアジア系の愛らしい少年ポッド・キャスト。トレヴァーの親友は彼が想いを寄せるアフリカ系の若い美女。セレステ・オコナーが演じていた。

トム・ホランド主演の『スパイダーマン』シリーズ同様、ポリティカル・コレクトの意識の高さを感じた。もちろん、二人ともその兄妹と同じくらい魅力的だった。

思わず笑ってしまったのは、ゴーストの事を何も知らない警察に捕まって留置場に入れられたフィービーが警官に電話を借りたいと言って、その警官から、誰にかけるんだ、と尋ねられた彼女が電話をかけた相手が、ダン・エイクロイド演じる旧ゴーストバスターズの一員スタンツ教授だった時。ワクワクが止まらなかった。若いゴーストバスターズを助けるべく現れた旧ゴーストバスターズが、年齢を考えれば仕方ないが、若干老いぼれていたのも可笑しかった。

監督はジェイソン・ライトマン。『ゴーストバスターズ』シリーズの第1作と第2作を監督したアイヴァン・ライトマンの息子さんだ。そのアイヴァンさんは2022年2月12日に永眠。その悲しいニュースを聞いたのが観覧直後だったので感慨深くなった。フィービー、彼女の母親、そして、その父親の3代にわたるスペングラー家の物語がしっかり描かれていたのも、ジェイソンが父の助言をしっかり聞いていたからに違いない。

人間ドラマだけでなく、映画館で初めて観たシリーズ作だったせいか、その壮大なCGIにも感動した。文句無しのシリーズ最高作だ。

2022年3月15日火曜日

ハウス・オブ・グッチ

2022年2月、『ハウス・オブ・グッチ』を初観覧。2020年公開の実話を基にしたドラマ映画。監督はリドリー・スコットで俳優陣も豪華だ。

高級ブランドで有名なグッチ一族の、1970年代後半以降の華麗と言うよりも俗な人間ドラマが描かれている。

グッチ一族の後継者の一人、マウリツィオ・グッチと若いイタリア娘パトリツィアとの愛憎物語とも言える本作。

パトリツィアの積極的なアプローチを受けて結婚までしてしまった世間知らずで家業にも興味の無い御曹司マウリツィオは、婚姻後も野心家のパトリツィアに従順であったが、次第に彼女が疎ましくなり、男の意地も手伝って言いなりになるのを止める。

悩める謙虚な若者から妻のおかげである程度立派な男になれたにもかかわらず、そのまま思い上がってしまったマウリツィオをアダム・ドライバーが繊細に演じ切っている。

そして、パトリツィア役はレディ・ガガ。これまでに彼女が歌唱していた姿を度々目にしていたが、思っていたよりも小柄だったのに少し驚いた。しかし、彼女の気の強そうな顔つきはパトリツィア役にはうってつけに感じた。演技は、本業が歌手の割には良かったが、それほど上手いとは感じなかったものの、その情熱的な表情やふるまいは観応えがあった。

アル・パチーノも出演。40代と50代の彼は大好きだが、数年前に観た『アイリッシュマン』の3回目の観覧時に老いが気になって若干失望してしまった。本作では、あまり期待せずにいたのが幸いしたのか、年相応の爺様を魅力たっぷりに演じていた。まだまだ枯れ切ってほしくない俳優さんだ。

ジェレミー・アイアンズが演じた、マウリツィオの父ロドルフォ・グッチを見ながら、『フォードvsフェラーリ』に出ていたフェラーリの会長を思い出した。アイアンズは英国人らしいが、それでも、彼が演じたイタリア人の爺様のダンディな雰囲気には魅せられた。

監督のリドリー・スコットの前作『最後の決闘裁判』は、良作だとは思うが、心にはあまり響かなかった。本作でも響かなかったが、人間の愚かさが描かれていてじんわり沁みた。少なくとも、前作よりは好きだ。

「グッチ」というブランド名に翻弄された、本作における実在した方々のドラマは、正直、感動的ではなかった。むしろ、普通の人々に思えた。財を成しても身の程をわきまえていないと人はすぐに転落する。結局、人を狂わせるのは大金だ。コンスタン・ウー主演の『クレイジー・リッチ』を観た時にも思ったが、本当に幸せなのは小さな夢を持った謙虚な小金持ちなんだろうな。


2022年3月4日金曜日

007/慰めの報酬

2020年10月、『007/慰めの報酬』をTV画面にて初観賞。その後も時折観ている2008年公開のスパイ・アクション映画。ダニエル・クレイグが演じる007の第2作目。

物語は『007/カジノ・ロワイヤル』の続き。殺しのライセンスを得たばかりのジェームズ・ボンドが、生け捕るべき敵を次々と殺してしまうも、悪党たちとの死闘を通して工作員としての練度を高めてゆき、終盤で、前編で愛し合った女性との出来事に落とし前をつけて、スパイとして非情に徹する覚悟を新たにするお話。

冒頭のカーチェイスや海上でのボートによる逃走劇、飛行機とヘリコプターの空中戦、そして、終盤の砂漠の中に建っているホテルでの悪党たちとの死闘等、本作も本格的なアクションの連続だ。ダニエル・クレイグ演じる007が本当にカッコイイ。そして、中盤から行動を共にする、ウクライナ人俳優オルガ・キュリンコが演じたミステリアスな美女カミーユに敵と戦う時の心得を教えるボンドが紳士だった。ショーン・コネリーやロジャー・ムーアのボンドだったら絶対どこかで一夜を共にしているはずだ。

悪者たちに関しては、前作のマッツ様や次作のハビエル・バルデルと違い、それほどの華やかさや凄みは無い。悪役の一人マチュー・アマルリックは、ネット上で阿部サダヲに似ているという感想をよく目にしたが、私には手塚とおる似に見えた。いずれにしても迫力に欠けた。

『007/カジノ・ロワイヤル』と併せて観た方がより楽しめる、アクションだけでは無いスパイ・ドラマ映画の良作。

2022年3月2日水曜日

キングスマン:ファースト・エージェント

2022年1月、『キングスマン:ファースト・エージェント』を観覧。2021年公開のスパイ・アクション映画。主演はレイフ・ファインズ。タロン・エガートンとコリン・ファース主演の『キングスマン』の前日譚であり、『キングスマン』シリーズの第3作。

レイフ・ファインズが演じる、従軍経験を持つ英国の名門貴族オーランド・オックスフォード公が、第一次世界大戦下の世界の混乱を収めるべく独自に諜報活動を行い、その後、国家に属さない民間スパイ機関「キングスマン」を発足するお話。

『シンドラーのリスト』の戦争で少しおかしくなったナチ将校、『レッド・ドラゴン』の殺人鬼、そして、『ハリー・ポッター』シリーズの恐ろしい魔法使いといった悪役から、『メイド・イン・マンハッタン』の政治家や『ナイロビの蜂』の外交官といった紳士役まで様々な役柄を印象深くこなしているレイフ・ファインズ。割と好きな俳優さんだ。ここ数年は『007』シリーズや『オフィシャル・シークレット』で脇役だが存在感のある紳士役を好演していたので、本作で体を張ったアクションを披露している彼には少し驚いたし、顔が似ていてアクションもこなすリーアム・ニーソンやハリソン・フォードに対抗心を燃やして暴れまわっているようにも見えた。年齢を考えたら、無難に紳士役を演じていればいいのにとも思ったが、体を動かしたいお方なんだろうな。本作では、使命感を持って世界平和のために精力的に活動するオーランド・オックスフォード公役の演技だけでなくそのアクションも素晴らしかった。

残念だったのは、『キングスマン』シリーズの前2作と比べて、若い俳優の活躍が少ない事。オックスフォード公の息子役のハリス・ディキンソンや執事役のジェマ・アタートンの出番をもう少し増やしてほしかった。だからと言って、レイフ・ファインズがつまらなかったわけではない。私が無いものねだりをしているだけなのかもしれないし、それだけ、前2作のタロン・エガートンとコリン・ファースのコンビが素晴らしかった。

第一次世界大戦をコミカルに描いていて、また、名前くらいは知っていたラス・プーチンに興味を湧かせてくれた本作。続編が製作されるとしたら、第二次世界大戦の裏側がどう描かれるのか興味はある。

2022年2月24日木曜日

クライ・マッチョ

2022年1月、『クライ・マッチョ』を初観覧。2021年公開のドラマ映画。クリント・イーストウッド主演・監督作。

イーストウッド演じる老齢の男が、古い友人から、メキシコにいる彼の息子をアメリカに連れ帰ってほしいと頼まれ、メキシコに単身乗り込んでその少年を探し出し、彼と二人でアメリカへの出国を目指してメキシコを旅するお話。

2018年公開作の『運び屋』を観覧した時は、主演していたイーストウッドがすっかり衰えた爺様になっていたのに驚いた。だから、これが彼の最後の主演作になるんだろうな、と思いながら観ていたし、強い男を演じる彼が好きだったので、同年公開作の『さらば愛しきアウトロー』で俳優業を引退したロバート・レッドフォードと同様に、演じるのはその作品で最後にしてほしかった。2019年公開の『リチャード・ジュエル』では出演せず監督業に徹していて、その作品も素晴らしかったので、このまま監督業に徹していてほしいな、と思っていたが、本作で再度主演するというニュースを聞いた時は本当に驚いた。

もっと率直に言うと、主演は『グラン・トリノ』を最後にしてほしかったし、『運び屋』での彼の姿は、目はまだ死んでいなかったが、あまり見ていたいものではなかった。しかし、彼が演じる事を決意したのであれば、一ファンとしては見届けるべきだとも思い、『クライ・マッチョ』の観覧に臨んだ。

イーストウッドは、想像していたよりはお元気そうだった。さすがにもう筋骨隆々ではないが、休息が必要な時はしっかり寝るという姿や何が起こっても慌てず冷静に考えて行動する様に、腕力が無くとも心は強く持つべき、体力が落ちてもその時のベストを尽くせば活路は常に見いだせるというメッセージを感じた。そして、若い頃とは体力が格段に落ちてしまい、もうオジサンだから仕方がないと投げやりになりがちな日ごろの自分を改めようと思った。疲れた時はまず十分に睡眠を取ればいい。その時その時でやるべきことに集中して、余計な事は時間がある時に考えればいいのだ。

『グラン・トリノ』でのアジア人の子供との関係性の方が好きだが、メキシコで見つけ出して行動を共にした少年との交流もまた微笑ましかった。必要以上に、安易に子供に迎合しない姿勢も大人の正しい在り方だ。

酒場の女主人との交流では1992年公開の『マディソン郡の橋』を思い出した。あの作品では彼が土砂降りの中でずぶ濡れになったシーンが印象的だったが、本作における御大の彼女との接し方は粋だった。そして、女性を好きになっても、媚びは売るな、誠意だけはしっかり示せ、と言われた気がした。

生きる伝説、クリント・イーストウッドの過去の出演作が様々な場面で頭に浮かぶ良作。また演じたい役があったなら、再度、その役を通して年相応の男の流儀を示して頂きたい。

2022年2月17日木曜日

007/カジノ・ロワイヤル

2020年10月、『007/カジノ・ロワイヤル』をTV画面にて初観賞。その後も折に触れて観ている2006年公開のスパイ・アクション映画。ダニエル・クレイグが演じるジェームズ・ボンドの第1作。『007』シリーズの21作目。

殺しのライセンスを取得したばかりのMI6のエージェント、ジェームズ・ボンドの活躍。

ダニエル・クレイグが演じる007は、堅物っぽかったティモシー・ダルトンと同様にあまり浮ついていない。手あたり次第に女と寝る大昔の007とは大違いだ。ただ、彼はダルトン以上に、そして、ショーン・コネリーやロジャー・ムーアと同じくらい男の色気を漂わせている。そして、歴代のボンド俳優の中で殺しのライセンスに一番ふさわしいのは、ダニエル・クレイグだと思う。欧米人としては中肉中背だが、顔つきや体つき、身のこなしが闘う男だ。任務遂行の為にひたすら邁進する姿にシビれる。落ち着いた雰囲気と男臭さを併せ持つクレイグが、ボンド俳優の中で一番好きだ。

悪役で、日本では「北欧の至宝」と呼ばれている、マッツ・ミケルセンが出演。初めて観た彼が出演している映画は『永遠の門 ゴッホの見た未来』。その時は、ゴッホ役のウィレム・デフォーの存在感が圧倒的だったせいか、あまり印象に残らなかった。初めて彼を認識したのは、『ファンタスティック・ビースト』シリーズを降板したジョニー・デップの代役に抜擢されたニュースを聞いた時。世の女性にマッツ様と呼ばれているのもその時知った。本作でも噂に違わぬセクシーなお方だったし、本作を観賞していなかったら『アナザーラウンド』も観ていなかっただろう。

ピアース・ブロスナンの『007』シリーズからM役で出演しているジュディ・デンチも引き続きMとして出演。さすがの存在感。11年後に主演していた『ヴィクトリア女王 最期の秘密』でも女王様をチャーミングに演じていた。映画に出演し出したのは50歳をすぎてかららしい。80歳を過ぎても変わらず素敵な俳優さんだ。


2022年2月12日土曜日

パーフェクト・ケア

2022年1月、角川シネマ有楽町にて、『パーフェクト・ケア』を初観覧。2020年公開のブラック・コメディ映画。

裕福で孤独な老人たちを騙して彼らの財産を合法的に奪い続けていた女が、マフィアのボスの身内に手を出して窮地に追い込まれるお話。

胸くそ悪い映画だった。登場するのはほぼ全員悪党。善人に見えたのは、腹黒い女たちに利用されている間抜けな裁判長のみ。長生きするのが嫌になってくるお話だ。ま、私には彼女のような悪者に狙われるほどの財産は無いが。

冒頭で主人公の悪女が、私はライオンか子羊か、と自問自答している。この手の質問を耳にする度に、毎回、大げさだなと思う。そもそも、我々ヒトはずる賢いサルだったからこの星の生態系の頂点に座っているのだ。卑怯は時に生き延びる手段だ。強い動物に憧れる気持ちは理解できるが、動物を用いる究極の質問に関しては、真面目に考える気にもなれない。

それにしても、欧米人はライオンを比喩に使うのが好きだ。サッカーワールドカップでデイヴィッド・ベッカムがレッドカードで退場になりイングランドが敗退した翌日の、彼の母国の新聞が「ライオンのような勇者たち10人と1人の愚か者」という見出しを打った事が、当時、話題になった。そして、昨年観た『エンド・オブ・ステイツ』では、ジェラルド・バトラーとダニー・ヒューストン演じる男たちが、俺たちはライオンだ、と話していた。私は虎や狼の方が好きだな。特に一匹狼の孤高の姿には憧れる。

人間は騙す側と騙される側に分けられるかもだが、私はどちらにも属したくない。こんな甘えた考え方をしていると詐欺師たちのカモになるのかもしれない。油断大敵な夜の中だ。

主人公の、老人たちを騙す事に執念を燃やす姿やマフィア相手でも一歩も引かない態度を痛快だと絶賛する方々が大勢いるが、私は、彼女には無様に死んでほしいと心から願っていた。そう思わせたロザムンド・パイクの演技は素晴らしかった。

しかし、ヒーロー映画の悪者やサイコパスとは違う、一般市民の仮面を被る性根の腐った悪者を演じるってどんな気分なのかな。被害者の老人の一人を演じていたのがダイアン・ウィースト。可愛らしさと凄みを併せ持つ老女ぶりに魅せられた。『運び屋』にも出ていた。喜寿を過ぎてもお元気な役者さんだ。

2022年2月8日火曜日

ピアース・ブロスナンの007

ピアース・ブロスナン主演の『007』シリーズの第17作から第20作をそれぞれ2020年秋にTV画面で初観賞。その後も折りに触れて観ているスパイ・アクション映画群。

MI6のエージェント、ジェームズ・ボンドが活躍するスパイ映画。

他のボンドたちと比べるとあまり評判がよくなかったので、ブロスナンの007にはあまり期待していなかったが、映像があまり古くないせいもあるのか結構楽しめた。ショーン・コネリーは男らしくて、ロジャー・ムーアはハンサムな上にユーモアがあって、ティモシー・ダルトンは堅物に見えた。ブロスナンは、確かに他のボンドと比べると存在感が薄いが、まあまあハンサムで適度に洗練されていてアクションも無難にこなしているので、概ね悪くない。

『ゴールデンアイ』の公開は1995年。良作。ボンドガールが敵味方共に綺麗だ。ファムケ・ヤンセンとイザベラ・スコルプコ。そして、ジュディ・デンチがMとして初登場。

『トゥモロー・ネバー・ダイ』の公開は1997年。スパイ・アクション映画としては良作だと思うが、概してあまり印象に残らなかった。

『ワールド・イズ・ノット・イナフ』の公開は1999年。ボンドガールとしてソフィー・マルソーが出演。公開時30代前半。10代だった頃の彼女にはよく見惚れたが、性悪な敵役である本作ではあまり魅力的には見えなかった。それだけ、役に徹していたということだろう。

『ダイ・アナザー・デイ』の公開は2002年。マドンナがカメオ出演。先日観覧した『ハウス・オブ・グッチ』に出ていた同じく歌姫のレディ・ガガは、あまり演技が上手いとは思わなかったが『ボディ』のマドンナよりは断然良かった。マドンナは欲張らずに歌とライブ・パフォーマンスに集中した方がファンも喜ぶのでは。

そして、ジェフ・ブリッジスと同様、いかにもアメリカ人という出で立ちのマイケル・マドセンが出演。アメリカの竹内力だ。なぜか彼が出てくると嬉しくなる。存在感がある良い役者さん。

ハル・ベリーも出演。それまで、ボンドガールは白人美女という固定観念があったので、アジア人やアフリカ系の俳優が出てくると、別に人種差別をしているつもりはないのに個人的には少し違和感を覚えていた。だが、ベリーには違和感が無かった。そして、人種はどうでもいいなと思い始めた。彼女の魅力が私の固定観念を変えてくれた。


ティモシー・ダルトンの007

ロジャー・ムーアの007

ショーン・コネリーの007

2022年2月2日水曜日

ドント・ルック・アップ

2021年12月、ヒューマントラスト有楽町にて『ドント・ルック・アップ』を初観覧。2021年公開のブラック・コメディ映画。錚々たる有名俳優たちが出演している。

地球に衝突する彗星を発見した大学教授と彼の教え子がその事をアメリカ政府や国民に知らせようと奮闘するお話。

アメリカ大統領とその息子で主席補佐官の人間性にあまりにもリアリティが無さ過ぎたので、これは気楽に観るべきコメディだなと早々に感じて、現在の社会を風刺している場面などを楽しんだが、レオナルド・ディカプリオ演じる大学教授とその家族や仲間たちのラストの描写がやけにリアルで、その時間も必要以上に長すぎると感じてしまい、その場面は全く笑えなかった。その描写がもう少しあっさり終わっていれば、観賞後に面白かったなと思えただろう。だから、その点が残念だった。

そのラストの場面をリアルにするなら、大統領の人格ももう少しリアルにすべきだと思う。日本の総理大臣だったら、キングメーカーがより大きな影響力を持っているので、世界への影響力はアメリカ大統領ほどでは無い。だから、多少軽薄な人間の設定でも問題は無いと思うが、アメリカの大統領は世界に影響を及ぼすわけだから、あんな浅はかな人間だったらそもそも議員にすらなれないはずだ。ブッシュさんやトランプさんの悪評も、多少はマスコミのネガティブ報道のせいだろう。こんな風に感じてしまったのは、私が保守的な考え方を持っているせいかもしれないが。

ニュースキャスターは大衆受けしてテレビ局にとって都合の良いインテリに見える人間しかなれないわけだから、劇中のマヌケな二人で問題は無い。

メリル・ストリープは、設定された役柄の良し悪しはさておき、演技は素晴らしかった。そして、若い頃はバリバリの美男俳優だったレオナルド・ディカプリオが、カッコいいとは言えないひげ面のオジサン大学教授役。後半にティモシー・シャラメも登場。出演俳優たちが豪華すぎないかとも感じたが、そう言えば、若いハンサムな登場人物が出てないので納得。俳優たちの出演料の総額は莫大だっただろうけど。

この作品は概ね好評だ。私の感性は時代とズレている、と『最後の決闘裁判』に続いて感じてしまった。

2022年1月14日金曜日

ティモシー・ダルトンの007

ティモシー・ダルトンが主演した『007』シリーズの第15作と第16作、『リビング・デイライツ』と『消されたライセンス』を2020年秋にTV画面にて初観賞。その後もこれまでに数回観ているスパイアクション映画。それぞれ1987年と1989年に公開された。

イギリスの諜報機関の凄腕スパイ、ジェームズ・ボンドの活躍を描いた作品群。

ショーン・コネリーとロジャー・ムーアが演じていたボンドは、美女たちとすぐに男女の仲になるが、ティモシー・ダルトンが演じた彼はそうではない。その上、ダルトンが演じた彼はジョークもより少ない。そのせいで彼は堅物に見える。それに、50代でボンドを演じていたムーアは40代前半の彼よりも若々しく見える。娯楽大作の主役としては、やはり、ロジャー・ムーアは別格だ。

しかし、真面目に見える分、ダルトンが主演した作品はスパイ物としては面白い。そして、後にダニエル・クレイグが演じたボンドと似ている、浮ついていないという点は好感が持てる。

それでも、歴代のジェームズ・ボンド俳優と比べるとやはり地味に映る。でも、それは、ボンド俳優としてはそう見えるというだけで、ダルトンがカッコいい俳優さんである事は確かだ。

2作品のボンドガールに関しては、ダルトンが歴代俳優と比べて華やかさに欠けるせいか、美人ぞろいだ。『リビング・デイライツ』のマリアム・ダボ、『消されたライセンス』のキャリー・ローウェルとタリサ・ソトがそれぞれ綺麗で妖艶だ。

そして、『消されたライセンス』には若いベニチオ・デル・トロが悪役で出演している。彼にとっては2作目の映画出演らしい。この頃から存在感がある俳優さんだ。

2作品ともダニエル・クレイグ主演の『007』と同じくシリアスな作風。あくまでも私の主観だが、ダルトンにはクレイグほどの男の色気が感じられないので、ファンの方には申し訳ないが、両作とも『007』作品としてはあまり好きではない。

しかし、スパイ映画としては良作だと思う。


ロジャー・ムーアの007

ショーン・コネリーの007


2022年1月6日木曜日

ラストナイト・イン・ソーホー

2021年12月、『ラストナイト・イン・ソーホー』を初観覧。ホラー映画。主演はトーマシン・マッケンジー。

宣伝用のポスターからアニャ・テイラー=ジョイが主人公を演じているのかと思いきや、主役はトーマシンだった。『オールド』では出演シーンが期待していたよりも短かったが、本作では全編にわたってその美しい姿を拝めたので良かった。

田舎からロンドンに出てきた若い女性エリーが、あるアパートで生活を始めて以降、夜な夜な霊的な体験をする物語。

ある女性の悲しい過去を垣間見る霊感の強いエリー。美しいトーマシン・マッケンジーが演じたその彼女の、やたらと街中を走り回る姿や、笑顔、怯える顔といった様々な表情が終始愛らしくて、ホラーというよりもファンタジーに感じた。そして、後半の展開にも惹き込まれた。マジで面白かった。

冒頭の、田舎の実家で踊るエリーの愛らしい笑顔にまず惹き込まれた。そして、彼女がロンドンのデザイン学校の寮で生活を始めた時、彼女がヘッドフォンで聴いていた、私も大好きなバンド「キンクス」を、生意気そうな若い男が、ジジイが聴く音楽、と言って彼女を馬鹿にする場面で彼女への感情移入の度合いが高まった。人の好みを馬鹿にするヤツは最低だ。また、彼女を事あるごとに田舎から出てきた変わり者だとからかう彼女の性悪なルームメートの顔が、田舎から上京した頃、建物の高い東京は空が狭いと感じた事を東京育ちの同僚に話した時に、ポエムみたいねとバカにしてきたその東京女の意地悪な顔を連想させた。田舎者を馬鹿にするヤツはキライだ。

それで、余計にエリーが愛しくなった。

音楽も私好みだった。「キンクス」だけでなく、アニャ・テイラー=ジョイ演じるサンディがオーディションで歌った「ダウンタウン」は私の大好きな曲だ。様々な要素が私の心の琴線に触れる為、個人的にとても愛おしい物語だった。

ホラー要素も割とあるが、そんな事を忘れさせる美しいトーマシン・マッケンジーと物語の展開に酔いしれた作品。彼女と脚本が素晴らしい。

2022年1月5日水曜日

最後の決闘裁判

2021年11月、『最後の決闘裁判』を初観覧。歴史映画。公開時83歳のリドリー・スコット監督作。1386年に実際に起きた事件を基にしている。

騎士カルージュの妻マルグリットが夫の友人ル・グリから性的暴行を受け、それを知ったカルージュが決闘裁判でル・グリと対決するお話。物語は3人の視点で描かれている。

マット・デイモンが演じたカルージュは無骨で何よりも自分の名誉が大事な男。アダム・ドライバー演じるル・グリは知的で世渡り上手で女性に独りよがりな想いを押し付ける男。

2人とも地方の有力者の中にいそうな人物だ。小さな世界のトップに立てば大抵の事は自分の思い通りになるし、法を犯しても、それをもみ消せるし周りの人間たちに守られる。

地方出身なのでその程度の事はあり得ることだと想像できる。

自分のプライドが何よりも大切なカルージュは妻の本当の気持ちを知ろうとしない。マルグリットに横恋慕しているル・グリは、彼女がガサツな夫に実は嫌気がさしていて知的な自分に好意を抱いていると思い込んでカルージュ不在時の家を突然訪問して彼女を凌辱する。ここまでは、現代でも起こり得る悲劇だ。

その後、カルージュは己の面子にかけてル・グリと決闘する事となる。ジョディ・カマー演じるマルグリットは、女性と真摯に向き合えない彼らに翻弄される運命をただただ受け入れなければならなかった。

現代以上に女性が差別されている時代の悲しいお話だ。お三方の演技はとても素晴らしかった。

相手の命を奪った方が正しいという判決が下される中世ヨーロッパの決闘裁判に関しては、理不尽だが、男としては理解できる。娯楽が少ない時代の決闘は、腕力に自信のある男たちにとって、アドレナリンが体中に湧き上がる快感を味わえる、ある意味、一種の娯楽であったのではないだろうか。私も男なので、徒に他人を傷つけたいという気持ちはないが、戦争や最終手段としての決闘の際の、本来ヒトに備わっている野性の本能を解放できる瞬間の快感は想像できる。

結局、時代が違い過ぎるので一現代人としては、特に決闘に関しては、シュールに感じる作品だった。だが、大勢の方々が感動しているので、自分の感受性が低いのかなと悲しくもなる。確かに、私には芸術に対する感性が欠けている。