2022年2月12日土曜日

パーフェクト・ケア

2022年1月、角川シネマ有楽町にて、『パーフェクト・ケア』を初観賞。2020年公開のブラック・コメディ映画。

裕福で孤独な老人たちを騙して彼らの財産を合法的に奪い続けていた女が、マフィアのボスの身内に手を出して窮地に追い込まれるお話。

胸くそ悪い映画だった。登場するのはほぼ全員悪党。善人に見えたのは、腹黒い女たちに利用されている間抜けな裁判長のみ。長生きするのが嫌になってくるお話だ。ま、私には彼女のような悪者に狙われるほどの財産は無いが。

冒頭で主人公の悪女が、私はライオンか子羊か、と自問自答している。この手の質問を耳にする度に、毎回、大げさだなと思う。そもそも、我々ヒトはずる賢いサルだったからこの星の生態系の頂点に座っているのだ。卑怯は時に生き延びる手段だ。強い動物に憧れる気持ちは理解できるが、動物を用いる究極の質問に関しては、真面目に考える気にもなれない。

それにしても、欧米人はライオンを比喩に使うのが好きだ。サッカーワールドカップでデイヴィッド・ベッカムがレッドカードで退場になりイングランドが敗退した翌日の、彼の母国の新聞が「ライオンのような勇者たち10人と1人の愚か者」という見出しを打った事が、当時、話題になった。そして、昨年観た『エンド・オブ・ステイツ』では、ジェラルド・バトラーとダニー・ヒューストン演じる男たちが、俺たちはライオンだ、と話していた。私は虎や狼の方が好きだな。特に一匹狼の孤高の姿には憧れる。

人間は騙す側と騙される側に分けられるかもだが、私はどちらにも属したくない。こんな甘えた考え方をしていると詐欺師たちのカモになるのかもしれない。油断大敵な夜の中だ。

主人公の、老人たちを騙す事に執念を燃やす姿やマフィア相手でも一歩も引かない態度を痛快だと絶賛する方々が大勢いるが、私は、彼女には無様に死んでほしいと心から願っていた。そう思わせたロザムンド・パイクの演技は素晴らしかったと思う。でも、ヒーロー映画の悪者やサイコパスとは違う、一般市民の仮面を被る性根の腐った悪者を演じるってどんな気分なのかな。被害者の老人の一人を演じていたのがダイアン・ウィースト。可愛らしさと凄みを併せ持つ老女を好演していた。『運び屋』にも出ていた。齢70歳を過ぎても売れっ子の役者さんだ。

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