2022年2月24日木曜日

クライ・マッチョ

2022年1月、Movix亀有にて『クライ・マッチョ』を初観賞。2021年公開のドラマ映画。クリント・イーストウッド主演・監督作。

イーストウッド演じる老齢の男が、古い友人から、メキシコにいる彼の息子をアメリカに連れ帰ってほしいと頼まれ、メキシコに単身乗り込んでその少年を探し出し、彼と二人でアメリカへの出国を目指してメキシコを旅するお話。

2018年公開作の『運び屋』を観覧した時は、主演していたイーストウッドがすっかり衰えた爺様になっていたのに驚いた。だから、これが彼の最後の主演作になるんだろうな、と思いながら観ていたし、強い男を演じる彼が好きだったので、同年公開作の『さらば愛しきアウトロー』で俳優業を引退したロバート・レッドフォードと同様に、演じるのはその作品で最後にしてほしかった。2019年公開の『リチャード・ジュエル』では出演せず監督業に徹していて、その作品も素晴らしかったので、このまま監督業に徹していてほしいな、と思っていたが、本作で再度主演するというニュースを聞いた時は本当に驚いた。もっと率直に言うと、主演は『グラン・トリノ』を最後にしてほしかったし、『運び屋』での彼の姿は、目はまだ死んでいなかったが、あまり見ていたいものではなかった。しかし、彼が演じる事を決意したのであれば、一ファンとしては見届けるべきだとも思い、『クライ・マッチョ』の観覧に臨んだ。

イーストウッドは、想像していたよりはお元気そうだった。さすがにもう筋骨隆々ではないが、休息が必要な時はしっかり寝るという姿や何が起こっても慌てず冷静に考えて行動する様に、腕力が無くとも心は強く持つべき、体力が落ちてもその時のベストを尽くせば活路は常に見いだせるというメッセージを感じた。そして、若い頃とは体力が格段に落ちてしまい、もうオジサンだから仕方がないと投げやりになりがちな日ごろの自分を改めようと思った。疲れた時はまず十分に睡眠を取ればいい。その時その時でやるべきことに集中して、余計な事は時間がある時に考えればいいのだ。

『グラン・トリノ』でのアジア人の子供との関係性の方が好きだが、メキシコで見つけ出して行動を共にした少年との交流もまた微笑ましかった。必要以上に、安易に子供に迎合しない姿勢も大人の正しい在り方だ。

酒場の女主人との交流では1992年の『マディソン郡の橋』を思い出した。あの作品では彼が土砂降りの中でずぶ濡れになったシーンが印象的だったが、本作における御大の彼女との接し方は粋だった。そして、女性を好きになっても、媚びは売るな、誠意だけはしっかり示せと言われた気がした。

生きる伝説、クリント・イーストウッドの過去の出演作が様々な場面で頭に浮かぶ良作。また演じたい役があったなら、再度、その役を通して年相応の男の流儀を示して頂きたい。

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