2022年4月25日月曜日

映画『シャドウ・イン・クラウド』(2020年)

2022年4月、『シャドウ・イン・クラウド』を合計3回観覧した。2020年公開のアクション映画。日本公開は2022年4月。クロエ・グレース・モレッツ主演。

第二次世界大戦時のニュージーランドにて、若い女性兵士モードが、軍の機密情報が入った鞄を持って出発間際の軍用機に乗り込み、その後、乗組員の男たちと共に様々な困難に直面し奮闘するお話。

モードを演じた綺麗で可愛らしいクロエ・グレース・モレッツの、表現力豊かな素晴らしい演技と体を張ったアクションが全編で堪能できる、私のような彼女のファンへのプレゼントみたいな作品だ。男たちの猥談を軽くかわしつつ、戦闘になった際には男勝りの活躍を見せて、死傷者続出後に弱気になった男たちを叱咤激励しながら最後まで奮闘する姿は正に戦う天使だった。そして、最後に見せた母性。あのヒットガールを演じていた彼女はもう立派な大人の女性になったんだな、としみじみ思った。

初観覧時に突然現れたグレムリンを見た時は若干違和感を覚えた。西洋では機械に悪戯をする妖精として有名らしい。それでも、何か不自然だなと思ったが、本作は典型的なB級のローラーコースタームービー。そんな些細な事を気にするのは野暮な話だ、余計な事を考えずに楽しんだ者勝ちの83分だ。2回目以降はそう思いながら観覧した。

所々でフェミニズムを感じる作風。モードに対する下衆な男たちの卑猥な冗談を聞きながら、男社会の中で揉まれる少数派の女性たちの大変さを思った。これまでにも、『ハスラーズ』、『ストーリー・オブ・マイライフ』、『プロミシング・ヤング・ウーマン』といった女性が監督した作品に男社会の歪な部分を気付かされたが、本作でも色々と考えさせられた。クロエのみならず監督のロザンヌ・リャンの次回作にも注目したい。

2022年4月20日水曜日

映画『THE BATMAN-ザ・バットマン-』(2022年)

2022年3月、『THE BATMAN-ザ・バットマン-』を初観覧。スーパーヒーロー映画。原作はDCコミックスの『バットマン』。ロバート・パティンソン主演。

スーパーヒーローのバットマンが、彼が住む架空都市ゴッサム・シティで起きた連続殺人事件を解決するために奔走するお話。

復讐について考えさせられた。

復讐は愚かだと犠牲者に誰が言えるのだろうか。そして、復讐心を生まない人間社会の形成は多分不可能だ。もし私がその当事者になったら、相手に復讐するための完全犯罪を考え続けることに集中して、その間に私の復讐心が自然と消えるのを祈るだろう。だが、正直、実際に被害者になったら、自分が何をしでかすかは分からない。

ロバート・パティンソンがまだ若いブルース・ウェインとバットマンを繊細に演じ分けていた。マイケル・キートンやクリスチャン・ベールが演じた彼らよりも好きだ。だが、強すぎたり大人過ぎたりするのでバットマン自体はスパイダーマンほど好きではない。

ジャック・ニコルソン、ヒース・レジャー、そして、ホアキン・フェニックスが演じたキャラクター、ジョーカーの方が好きだ。ゴッサム・シティの雰囲気に合う悪党だ。

その上、今回、頭に触覚がついているそのコスチュームが、長年のファンの方は見慣れてしまって何とも思わないのかもしれないが、可笑しくて仕方がなかった。特に、警察が現場検証をしている場所に彼が真面目な顔で現れた時、お笑い番組の観過ぎかもだが、警官たちがその扮装をなぜイジらないのかとさえ思った。可笑しいと言えば、キャットウーマンの鼠小僧のようなマスクもまた、日本人特有の感覚かもしれないが、可笑しすぎて、そして、ダサすぎて白けてしまった。やはり、ミシェル・ファイファーも演じていたが、キャットウーマンと言えば、ハル・ベリーだ。

3時間を超える上映時間は私には長すぎたが、作品自体はよくできたスーパーヒーロー物であると同時に上質のサスペンス映画で、アクション作品としても素晴らしいと思う。そして、最後のバットマンの選択は感動的だった。スパイダーマンの「大いなる力には大いなる責任が伴う」に通じるスーパーヒーローとしての責任感が滲んでいた。

2022年4月14日木曜日

映画『007 スカイフォール』(2012年)

2021年10月、『007 スカイフォール』をTVにて初観賞。その後も時折観賞。スパイ・アクション映画。ダニエル・クレイグ版007の3作目。

世界各国のテロ組織に潜入しているNATOの工作員の情報が収められたPCのハードディスクが何者かに盗まれて、その何者かにMI6のボスであるMが狙われるお話。

序盤から非情な采配を取るM。その結果、ジェームズ・ボンドが味方の銃弾を受けて高所から落下して行方不明になる。奇跡的に生き延びたボンドはそのまま失踪するが、その後、MI6の本部が爆破された事を知り、Mの元に駆け付けて職務に復帰する。敵のMへの執着心はすさまじく、ボンドは最終的にスカイフォールと呼ばれる彼の生家にMを匿い、執拗に彼女を付け狙う敵との最後の決戦に挑む。

本作も本格的なアクションシーン満載。終盤の闘いではMも自ら銃を手に取る。そんな彼女が「銃はヘタなの」と話す様が愛らしい。

『ゴールデンアイ』から8作続けてMを演じているジュディ・デンチ。本作のボンドガールは彼女だろう。他にも2人の若い美女が登場するが、そして、デンチは小太りの中年女性ではあるが、彼女の持つ存在感が圧倒的で若い2人の印象は薄い。その上、彼女が演じるMの毅然とした姿勢や物腰には若い女性には醸し出せない凄みや落ち着いた雰囲気があり、それがまたチャーミングでもある。

また、過去に007を演じていてもおかしくなかった、風貌がまさに英国紳士のレイフ・ファインズが、Mに引退を勧める英国政府の高官として出演。そして、『ノーカントリー』での怪演が有名なハビエル・バルデルが悪役で出演。脇役陣に存在感がある為、他の作品と比べるとボンドの印象が若干薄めなアクション映画の良作。

2022年4月13日水曜日

映画『ナイル殺人事件』(2022年)

2022年3月、『ナイル殺人事件』を初観覧。ミステリー映画。アガサ・クリスティーが1937年に発表した推理小説『ナイルに死す』が原作。監督およびポアロ警部役はケネス・ブレナー。

豪華客船の中で起きた殺人事件の謎に名探偵ポアロが挑むお話。

2021年8月にTV画面で初観賞した同じくアガサ・クリスティー原作で監督およびポアロ警部役がケネス・ブレナーの映画『オリエント急行殺人事件』はジョニー・デップ、デイジー・リドリー、ミシェル・ファイファー等の有名俳優たちが多数出演していて観応えがあったが、原作既読か1974年公開の旧作を観ていたら感想は違っていたかもしれないものの、物語の結末が若干物足りなかった。だから、次作でもある本作を劇場観覧する気は無かった。しかし、今をときめく美女ガル・ガドットが出演すると知って、『ワンダーウーマン 1984』以来となる目の保養の為に映画館まで足を運んだ。

ガルは本当に美しかった。それでも、やはり、本作も前作と同様に謎が多過ぎたため、仕事帰りで疲れが残っていたこともあり、特に殺人が起こった後は、話の展開についていくのがやっとで俳優たちの演技を上の空で見ていたため、ポアロ警部が事件の謎を解き始めてからはただただスクリーンを眺めるだけだった。観客が原作や旧作などで大まかな粗筋を知っているという前提で製作された作品でもあるので、前知識無しで初観賞に挑んでしまった私が作品を心から楽しめなかった事は仕方がないと思う。そして、複雑な話で有名俳優たちが多数出演しているため、本作は何度も楽しめる作品だとも言える。ただ、今回の観覧で、私は、ミステリーをそれほど好きではない、そして、映画館で観賞する際はなるべく余計な事を考えずに俳優たちの演技の妙を楽しみたい人間だと気づいた。そもそも、私は、どうせ種があるんだろ、と思いながら手品を白けた目で見てしまう人間だ。

ガル以外で印象に残ったのは、まず、ローズ・レスリー。控え目だが存在感のある美女。ガルを引き立てる役柄に徹している様に好感が持てた。そして、アネット・ベ二ング。『アメリカン・ビューティ』に出演していた時は綺麗な中年女性という感じだったが、本作でのお婆様役ぶりには驚かされた。正直、見るのが久しぶりだったこともあり、最初は、彼女だと気づけなかった。ベニング姐さんもついにお婆ちゃんを演じるようになったのかと感慨深くなり、鏡の中の自分がオッサンになってしまっているのも仕方がない事だなと納得した。それにしても、スキャンダルで俳優業を続けるのが難しくなったと聞いていたアーミー・ハマーが出ている事に驚いた。禊が済んだという事なのかな。彼が出演していた大好きなスパイ映画『コードネーム U.N.C.L.E.』の続編は製作されるのかな。

前述した通り、本作の映画館での観賞は満足いくものではなかった。良作ではあったと思う。いつか、家でくつろぎながら、リモコン片手に早戻ししながら、ゆっくりじっくり再観賞できれば好きになれそうな気はする。

2022年4月6日水曜日

映画『パワー・オブ・ザ・ドック』(2021年)

2022年3月、キネマ旬報シアターにて『パワー・オブ・ザ・ドック』を初観覧。ドラマ映画。原作は1967年に発表されたトーマス・サヴェージの同名小説。舞台は1920年代後半の米国モンタナ州。監督はジェーン・カンピオン。ベネディクト・カンバーバッチ主演。

LGBTの方々が不用意に自身の秘密を明かせない、まだ保守的な時代を生きた2人の男の物語。

『ジョジョ・ラビット』や『ラストナイト・イン・ソーホー』でその美しさに見惚れてしまったトーマシン・マッケンジー出演と知り、また、『スパイダーマン』のメリー・ジェーン役でお馴染みだったキルティン・ダンストの現在も見たくなり観覧に臨んだが、トーマシンに関しては、出演場面が短かった『オールド』よりもさらに登場時間が短かったため、がっかりした。ダンストは、義理の兄からの精神的な嫌がらせで追いつめられる人妻役。しかし、ベネディクト・カンバーバッチの存在感が圧倒的だったので、途中から、その2人の事はどうでもよくなってしまった。カンバーバッチの演技は本当に素晴らしかった。一瞬たりとも目が離せなかった。納得のアカデミー賞主演男優賞ノミネート。オスカーは『ドリームプラン』主演のウィル・スミスが獲得したが、私は、カンバーバッチの演技の方が好きだった。また、カンバーバッチが演じたマッチョな男の描写が極めて繊細だったのは、本作の監督が女性だったからだろう。女目線で見る男の姿には、男が逆に気づかされる点が多い。

それぞれゲイとサイコパスである2人が引き起こした事件を観ながら、勇気ある方々が声を上げ始めたおかげで昔よりも少しはマシになったこの日本ですらあの2人が起こしたような悲劇が今もどこかで起きている、と思って憂鬱になった。

LGBTQの問題は、社会全体が変わらないと解決しない。本来の自分を出せないまま抑圧されて生きている人々が自分をさらけ出して伸び伸びと生きられる事はその社会にとっても有益なはずだが、そんな事を絶対に認めたくない、自身の古い固定観念を変えられない人間はまだまだ大勢いる。

時代は簡単には変わらないだろう。それでも、このような映画は、微力だが、私たちの社会にとって有益だ。

2022年4月1日金曜日

映画『ドリームプラン』(2021年)

ドラマ映画。実話。ウィル・スミス主演。

世界的に有名なプロテニス・プレイヤーのウィリアムズ姉妹を育て上げた彼女たちの父親リチャード・ウィリアムズのお話。

ウィル・スミスの自分の信念を曲げない頑固親父役に魅せられた。陽気でハンサムなイメージの彼が、見た目が残念な中年男性を演じていた事に少し驚いたが、彼の持ち味でもある陽気で爽やかなイメージを抑えたその演技は素晴らしかった。

彼の作品で一番好きなのはマイケル・マン監督作の『ALI アリ』。その役柄でアカデミー賞主演男優賞にもノミネートされていた。そして、2022年、本作で主演男優としてオスカーを初受賞。

その授賞式で、長編ドキュメンタリー映画賞のプレゼンターを任されたクリス・ロックがスピーチ中にスミスの妻の容姿を揶揄した。最初は笑っていたスミスだったが、突然、立ち上がって壇上に歩み寄りロックを平手打ち。席に戻ったスミスがロックに向かって大声で「お前のクソッタレな口から俺の妻の名前を出すな!」と叫ぶと、ロックは「もう言わないよ」とマイクを使って返答。コメディアンとしてきわどいスピーチを期待されていたロックは、同じアフリカ系のスミスなら遺憾の意を後で示すくらいで済ませてくれるだろうと計算していたのだろうし、スミスがあそこまで怒りを露わにするとは思っていなかっただろう。

なぜ、スミスがあの晴れの舞台であんな事をしてしまったのか。妻への強い愛か、何もしなかったら後で妻に怒られるのが怖かったからか、はたまた、あれは、アメリカでまことしやかにささやかれている、茶番劇だったのか。写真ではロックの顔が平手打ちされたかのように見えるが、動画でよく確認すると、スミスはロックの左胸を平手打ちしている。もし、スミスが拳でロックの顔を殴っていたらやり過ぎだったと思うが、胸をはたいただけなので、個人的には、あれが妻への強い愛から生じたのならば、許されない行動ではないと思うし、また、その男らしさで彼を見直した。暴力はいけないとよく言われるが、こっちの怒りの度合いが分からない相手にはある程度の行動は仕方がない。

その後、彼自身の主演男優賞受賞のスピーチで「デンゼル・ワシントンが『最高の瞬間の時こそ気をつけろ。悪魔が忍び寄るのはそんな時だ』と先ほど話してくれた」と言っていた。アフリカ系の方々は、ラテン系の方々同様、軽くて陽気過ぎる気質の方が多いので、内気な私は劣等感を覚えるため、大ファンのアフリカ系俳優は少ない。ウィル・スミスも、本作の演技や今回の立ち居振る舞いで好感を持ったが、それまではあまり好きな俳優さんではなかった。しかし、人格者というイメージもあるデンゼル・ワシントンは好きだ。そのエピソードを知った時はさすがデンゼルと思った。自分にもそんな瞬間が来たら気を付けよう。因みに、スミスのオスカーはあの平手打ちではく奪される可能性があるらしい。世知辛い世の中だ。女性が同じ事をしても、そんな展開にはならないのでは。

観覧後、気になって主人公のリチャード・ウィリアムズさんについて調べてみたら、映画ではかなり美化されているんだろうな、と感じる人生を歩まれていた。また、ウィリアムズ姉妹はその身体能力と母のオラシーンの存在だけでもスーパースターになれたかもな、でも、当時は今以上に男社会だっただろうからリチャードの存在はやはり必要だっただろうな、などと考えさせられた。ま、ここで想像や仮定の話をしても仕方がない。映画に演出は付き物だし。

淡々と物語が進む展開。劇的な場面は少な目。じんわりと感動した。印象的だったのは、リチャードが『シンデレラ』を娘たちに観せて謙虚さの重要性を説く場面。期待していたほど人種差別問題に触れていなかったので若干拍子抜けもしたが、良いドラマ映画であることは確かだ。