2022年4月1日金曜日

ドリームプラン

2022年2月、Movix亀有にて『ドリームプラン』を初観賞した。2021年公開のドラマ映画。実話。ウィル・スミス主演。

世界的に有名なプロテニス・プレイヤーのウィリアムズ姉妹を育て上げた彼女たちの父親リチャード・ウィリアムズのお話。

ウィル・スミスが自分の信念を曲げない頑固親父を好演。陽気でハンサムなイメージの彼が、見た目が残念な中年男性を演じていた事に少し驚いた。そして、彼の持ち味でもある陽気で爽やかなイメージを抑えたその演技に彼の役者魂を感じた。彼の作品で一番好きなのはマイケル・マン監督作の『ALI アリ』。その熱演でアカデミー賞主演男優賞にもノミネートされていた。そして、2022年、本作で主演男優としてオスカーをついに獲得。初受賞のようだ。

その授賞式で、長編ドキュメンタリー映画賞のプレゼンターを任されたクリス・ロックがスピーチ中にスミスの妻の容姿を揶揄した。最初は笑っていたスミスだったが、壇上に近づいてロックを平手打ち。席に戻ったスミスがロックに向かって大声で「お前のクソッタレな口から俺の妻の名前を出すな!」と叫ぶと、ロックは「もう言わないよ」とマイクを使って返答。コメディアンとしてきわどいスピーチを期待されていたロックは、同じアフリカ系のスミスなら遺憾の意を後で示すくらいで済ませてくれるだろうと計算していたのだろうし、スミスがあそこまで怒りを露わにするとは思っていなかっただろう。なぜ、スミスがあの晴れの舞台であんな事をしてしまったのかはよく分からない。妻への強い愛か、何もしなかったら後で妻に怒られるのが怖かったからか、はたまた、あれは、アメリカでまことしやかにささやかれている、茶番劇だったのか。写真ではロックの顔が平手打ちされたかのように見えるが、動画でよく確認すると、スミスはロックの左胸を平手打ちしている。もし、スミスが拳でロックの顔を殴っていたらやり過ぎだったと思うが、胸をはたいただけなので、個人的には、あれが妻への強い愛から生じたのならば、許されない行動ではないと思うし、また、その男らしさで彼を見直した。暴力はいけないとよく言われるが、こっちの怒りの度合いが分からない相手にはある程度の行動は仕方がない。その後、彼が、自身の主演男優賞受賞のスピーチ中に、デンゼル・ワシントンが「最高の瞬間の時こそ気をつけろ。悪魔が忍び寄るのはそんな時だ」と先ほど話してくれた、と言っていた。アフリカ系の方々は、ラテン系の方々同様、軽くて陽気過ぎる気質の方が多いので、内気な私は劣等感を覚えるため、大ファンのアフリカ系俳優は少ない。ウィル・スミスも、本作の演技や今回の立ち居振る舞いで好感を持ったが、それまではあまり好きな俳優さんではなかった。だが、人格者というイメージもあるデンゼル・ワシントンは好きだ。そのエピソードを知った時はさすがデンゼルと思った。自分にもそんな瞬間が来たら気を付けよう。因みに、スミスのオスカーはあの平手打ちではく奪される可能性があるらしい。世知辛い世の中だ。女性が同じ事をしても、そんな展開にはならなかったはず。

観覧後、気になってリチャード・ウィリアムズさんについて調べてみたら、映画ではかなり美化されているんだろうな、と感じる人生を歩まれていた。また、ウィリアムズ姉妹はその身体能力と母のオラシーンの存在だけでもスーパースターになれたかもな、でも、当時は今以上に男社会だっただろうからリチャードの存在はやはり必要だっただろうな、などと考えさせられた。ま、ここで想像や仮定の話をしても仕方がない。映画に演出は付き物だし。

淡々と物語が進む展開。劇的な場面は少な目。じんわりと感動した。印象的だったのは、リチャードが『シンデレラ』を娘たちに観せて謙虚さの重要性を説く場面。期待していたほど人種差別問題に触れていなかったので若干拍子抜けもしたが、良いドラマ映画であることは確かだ。

0 件のコメント:

コメントを投稿