2022年3月15日火曜日

ハウス・オブ・グッチ

2022年2月、Movix亀有にて『ハウス・オブ・グッチ』を初観賞した。2020年公開の実話を基にしたドラマ映画。監督はリドリー・スコットで俳優陣も豪華だ。

高級ブランドで有名なグッチ一族の、1970年代後半以降の華麗と言うよりも俗な人間ドラマが描かれている。

グッチ一族の後継者の一人、マウリツィオ・グッチと若いイタリア娘パトリツィアとの愛憎物語とも言える本作。パトリツィアの積極的なアプローチを受けて結婚までしてしまった世間知らずで家業にも興味の無い御曹司マウリツィオは、婚姻後も野心家のパトリツィアに従順であったが、次第に彼女が疎ましくなり、男の意地も手伝って言いなりになるのを止める。悩める謙虚な若者から妻のおかげである程度立派な男になれたにもかかわらず、そのまま思い上がってしまったマウリツィオをアダム・ドライバーが繊細に好演。そして、パトリツィア役はレディ・ガガ。これまでに彼女が歌唱していた姿を度々目にしていたが、思っていたよりも小柄だったのに少し驚いた。だが、彼女の気の強そうな顔つきはパトリツィア役にはうってつけに感じた。演技は、本業が歌手の割には良かったが、それほど上手いとは感じなかったものの、その情熱的な表情やふるまいは観応えがあった。

アル・パチーノも出演。40代と50代の彼は大好きだが、数年前に観た『アイリッシュマン』の3回目の観覧時に老いが気になって若干失望してしまった。本作では、あまり期待せずにいたのが幸いしたのか、年相応の爺様を魅力たっぷりに好演していた。まだまだ枯れ切ってほしくない俳優さんだ。

ジェレミー・アイアンズが演じた、マウリツィオの父ロドルフォ・グッチを見ながら、『フォードvsフェラーリ』に出ていたフェラーリの会長を思い出した。アイアンズは英国人らしいが、それでも、彼が演じたイタリア人の爺様のダンディな雰囲気には魅せられた。

監督のリドリー・スコットの前作『最後の決闘裁判』は、良作だとは思うが、心にはあまり響かなかった。本作でも響かなかったが、人間の愚かさが描かれていてじんわり沁みた。少なくとも、前作よりは好きだ。

「グッチ」というブランド名に翻弄された、本作における実在した方々のドラマは、正直、感動的ではなかった。むしろ、普通の人々に思えた。財を成しても身の程をわきまえていないと人はすぐに転落する。結局、人を狂わせるのは大金だ。コンスタン・ウー主演の『クレイジー・リッチ』を観た時にも思ったが、本当に幸せなのは小さな夢を持った謙虚な小金持ちなんだろうな。


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