2022年1月5日水曜日

最後の決闘裁判

202111月、Movix亀有にて『最後の決闘裁判』を初観賞。2021年公開の歴史映画。公開時83歳のリドリー・スコット監督作。1386年に実際に起きた事件を基にしている。

騎士カルージュの妻マルグリットが夫の友人ル・グリから性的暴行を受け、それを知ったカルージュが決闘裁判でル・グリと対決するお話。物語は3人の視点で描かれている。

マット・デイモンが演じたカルージュは無骨で何よりも自分の名誉が大事な男。アダム・ドライバー演じるル・グリは知的で世渡り上手で女性に独りよがりな想いを押し付ける男。二人とも地方の有力者の中にいそうな人物だ。小さな世界のトップに立てば大抵の事は自分の思い通りになるし、法を犯しても、それをもみ消せるし周りの人間たちに守られる。私は地方出身なのでその程度の事はあり得ることだと知っている。自分のプライドが何よりも大切なカルージュは妻の本当の気持ちを知ろうとせず、マルグリットに横恋慕しているル・グリは、彼女がガサツな夫に実は嫌気がさしていて知的な自分に好意を抱いていると思い込んで、カルージュ不在時の家を突然訪問して彼女を凌辱する。ここまでは、現代でも起こり得る悲劇だ。その後、カルージュは己の面子にかけてル・グリと決闘する事となる。ジョディ・カマー演じるマルグリットは、女性に真摯に向き合えない彼らに翻弄される運命をただただ受け入れなければならなかった。現代以上に女性が差別されている時代の悲しいお話だ。お三方の演技はとても素晴らしかった。

相手の命を奪った方が正しいという判決が下される中世ヨーロッパの決闘裁判に関しては、理不尽だが、男としては理解できる。娯楽が少ない時代の決闘は、腕力に自信のある男たちにとって、アドレナリンが体中に湧き上がる快感を味わえる、ある意味、一種の娯楽であったのではないだろうか。私も男なので、徒に他人を傷つけたいという気持ちはないが、戦争や最終手段としての決闘の際の、本来ヒトに備わっている野性の本能を解放できる瞬間の快感は想像できる。

結局、時代が違い過ぎるので一現代人としては、特に決闘に関しては、シュールに感じる作品だった。だが、大勢の方々が感動しているので、自分の感受性が低いのかなと悲しくもなる。確かに、私には芸術に対する感性が欠けている。

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