2022年5月12日木曜日

グッバイ、リチャード!

202010月、キネマ旬報シアターにて『グッバイ、リチャード!』を初観賞。2018年公開のコメディドラマ。ジョニー・デップ主演。2021年9月に劇場観覧した『MINAMATA』でのデップの好演ぶりや、その翌月に観覧した『アナザーラウンド』でマッツ・ミケルセンが演じた冴えない高校教師とその親友であり同僚でもある3人との友情物語を観て、本作でも好演していたデップと彼が演じた教師とその同僚との友情物語をまた観たくなり、観賞。それ以降も何度か観ているお気に入りの作品。

肺がんと診断され余命宣告を受けた中年教師リチャードのその後の生き様が描かれている。

自分の残された時間を医者から知らされたその日の夜の家族の団らんで一人娘からレズである事をカミングアウトされるリチャード。彼の妻は一時的なものと一笑に付すもリチャードは娘に理解を示す。もし死期が近づいていなかったら、彼は、妻に同調するか、無関心でいるか、世間体を気にして黙っているように娘に諭す父親であっただろう。その後、妻から不倫をしていると告げられるも、特に怒るわけでもなく、その相手が普段から彼が軽蔑している俗物な学長であることを知って呆れるのみ。結局、自分が末期ガンだと初めて伝えたのは同僚の親友だった。学校でのリチャードは、一見投げやりだが、『いまを生きる』のロビン・ウィリアムズを彷彿とさせる魂の授業を始める。フェミニストの生徒を邪険に扱う様が愉快。その授業中に酒を飲んだりマリファナをやる姿は、『アナザーラウンド』でマッツ様が演じた酒の助けを借りながら生徒を熱中させる中年教師を連想させる。そういう授業は、テストの為の退屈なそれよりも断然刺激的で、若い生徒たちの為にもなると思う。

ジョニー・デップがそんなリチャードを全編に渡って、時にコミカルに、そして、魅力たっぷりに演じている。くたびれた中年役なのに本当にカッコいい。

そして、本作は、一人で向き合うにはすごくしんどい、「死」の観念について悲壮感をあまり覚えずに考えることができる素晴らしい映画だ。

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