2022年3月2日水曜日

キングスマン:ファースト・エージェント

2022年1月、Movix亀有にて『キングスマン:ファースト・エージェント』を観賞した。2021年公開のスパイ・アクション映画。主演はレイフ・ファインズ。タロン・エガートンとコリン・ファース主演の『キングスマン』の前日譚であり、『キングスマン』シリーズの第3作。

レイフ・ファインズが演じる、従軍経験を持つ英国の名門貴族オーランド・オックスフォード公が、第一次世界大戦下の世界の混乱を収めるべく独自に諜報活動を行い、その後、国家に属さない民間スパイ機関「キングスマン」を発足するお話。

『シンドラーのリスト』の戦争で少しおかしくなったナチ将校、『レッド・ドラゴン』の殺人鬼、そして、『ハリー・ポッター』シリーズの恐ろしい魔法使いといった悪役から、『メイド・イン・マンハッタン』の政治家や『ナイロビの蜂』の外交官といった紳士役まで様々な役柄を好演してきたレイフ・ファインズ。割と好きな俳優さんだ。ここ数年は『007』シリーズや『オフィシャル・シークレット』で脇役だが存在感のある紳士役を好演していたので、本作で体を張ったアクションを披露している彼には少し驚いたし、顔が似ていてアクションもこなすリーアム・ニーソンやハリソン・フォードに対抗心を燃やして暴れまわっているようにも見えた。年齢を考えたら、無難に紳士役を演じていればいいのにとも思ったが、体を動かしたいお方なんだろうな。本作では、使命感を持って世界平和のために精力的に活動するオーランド・オックスフォード公を好演。アクションも素晴らしかった。

残念だったのは、『キングスマン』シリーズの前2作と比べて、若い俳優の活躍が少ない事。オックスフォード公の息子役のハリス・ディキンソンや執事役のジェマ・アタートンの出番をもう少し増やしてほしかった。だからと言って、レイフ・ファインズがつまらなかったわけではない。私が無いものねだりをしているだけなのかもしれないし、それだけ、前2作のタロン・エガートンとコリン・ファースのコンビが素晴らしかったのだと思う。

第一次世界大戦をコミカルに描いていて、また、名前くらいは知っていたラス・プーチンに興味を湧かせてくれた本作。だが、正直、面白さはまあまあだった。次作が製作されるとしたら、第二次世界大戦の裏側がどう描かれるのか興味はある。

2022年2月24日木曜日

クライ・マッチョ

2022年1月、Movix亀有にて『クライ・マッチョ』を初観賞。2021年公開のドラマ映画。クリント・イーストウッド主演・監督作。

イーストウッド演じる老齢の男が、古い友人から、メキシコにいる彼の息子をアメリカに連れ帰ってほしいと頼まれ、メキシコに単身乗り込んでその少年を探し出し、彼と二人でアメリカへの出国を目指してメキシコを旅するお話。

2018年公開作の『運び屋』を観覧した時は、主演していたイーストウッドがすっかり衰えた爺様になっていたのに驚いた。だから、これが彼の最後の主演作になるんだろうな、と思いながら観ていたし、強い男を演じる彼が好きだったので、同年公開作の『さらば愛しきアウトロー』で俳優業を引退したロバート・レッドフォードと同様に、演じるのはその作品で最後にしてほしかった。2019年公開の『リチャード・ジュエル』では出演せず監督業に徹していて、その作品も素晴らしかったので、このまま監督業に徹していてほしいな、と思っていたが、本作で再度主演するというニュースを聞いた時は本当に驚いた。もっと率直に言うと、主演は『グラン・トリノ』を最後にしてほしかったし、『運び屋』での彼の姿は、目はまだ死んでいなかったが、あまり見ていたいものではなかった。しかし、彼が演じる事を決意したのであれば、一ファンとしては見届けるべきだとも思い、『クライ・マッチョ』の観覧に臨んだ。

イーストウッドは、想像していたよりはお元気そうだった。さすがにもう筋骨隆々ではないが、休息が必要な時はしっかり寝るという姿や何が起こっても慌てず冷静に考えて行動する様に、腕力が無くとも心は強く持つべき、体力が落ちてもその時のベストを尽くせば活路は常に見いだせるというメッセージを感じた。そして、若い頃とは体力が格段に落ちてしまい、もうオジサンだから仕方がないと投げやりになりがちな日ごろの自分を改めようと思った。疲れた時はまず十分に睡眠を取ればいい。その時その時でやるべきことに集中して、余計な事は時間がある時に考えればいいのだ。

『グラン・トリノ』でのアジア人の子供との関係性の方が好きだが、メキシコで見つけ出して行動を共にした少年との交流もまた微笑ましかった。必要以上に、安易に子供に迎合しない姿勢も大人の正しい在り方だ。

酒場の女主人との交流では1992年の『マディソン郡の橋』を思い出した。あの作品では彼が土砂降りの中でずぶ濡れになったシーンが印象的だったが、本作における御大の彼女との接し方は粋だった。そして、女性を好きになっても、媚びは売るな、誠意だけはしっかり示せと言われた気がした。

生きる伝説、クリント・イーストウッドの過去の出演作が様々な場面で頭に浮かぶ良作。また演じたい役があったなら、再度、その役を通して年相応の男の流儀を示して頂きたい。

2022年2月17日木曜日

007/カジノ・ロワイヤル

2020年10月、『007/カジノ・ロワイヤル』をTV画面にて初観賞。その後も折に触れて観ている2006年公開のスパイ・アクション映画。ダニエル・クレイグが演じるジェームズ・ボンドの第1作。『007』シリーズの21作目。

殺しのライセンスを取得したばかりのMI6のエージェント、ジェームズ・ボンドの活躍が描かれている。

ダニエル・クレイグが演じる007は、堅物っぽかったティモシー・ダルトンと同様にあまり浮ついていない。手あたり次第に女と寝る大昔の007とは大違いだ。ただ、彼はダルトン以上に、そして、ショーン・コネリーやロジャー・ムーアと同じくらい男の色気を漂わせている。そして、歴代のボンド俳優の中で殺しのライセンスに一番ふさわしいのは、ダニエル・クレイグだと思う。欧米人としては中肉中背だが、顔つきや体つき、身のこなしが闘う男だ。任務遂行の為にひたすら邁進する姿にシビれる。落ち着いた雰囲気と男臭さを併せ持つクレイグが、ボンド俳優の中で一番好きだ。

悪役で、日本では「北欧の至宝」と呼ばれている、マッツ・ミケルセンが出演。初めて観た彼が出演している映画は『永遠の門 ゴッホの見た未来』。その時は、ゴッホ役のウィレム・デフォーの存在感が圧倒的だったせいか、あまり印象に残らなかった。近いうちに再観賞したい。そして、初めて彼を認識したのは、『ファンタスティック・ビースト』シリーズを降板したジョニー・デップの代役に抜擢されたニュースを聞いた時。世の女性にマッツ様と呼ばれているのもその時知った。本作でも噂に違わぬセクシーなお方だったし、本作を観賞していなかったら『アナザーラウンド』も観ていなかっただろう。

ピアース・ブロスナンの『007』シリーズからM役で出演しているジュディ・デンチも引き続きMとして出演。さすがの存在感。11年後に主演していた『ヴィクトリア女王 最期の秘密』でも女王様をチャーミングに演じていた。映画に出演し出したのは50歳をすぎてかららしい。80歳を過ぎても変わらず素敵な俳優さんだ。


2022年2月12日土曜日

パーフェクト・ケア

2022年1月、角川シネマ有楽町にて、『パーフェクト・ケア』を初観賞。2020年公開のブラック・コメディ映画。

裕福で孤独な老人たちを騙して彼らの財産を合法的に奪い続けていた女が、マフィアのボスの身内に手を出して窮地に追い込まれるお話。

胸くそ悪い映画だった。登場するのはほぼ全員悪党。善人に見えたのは、腹黒い女たちに利用されている間抜けな裁判長のみ。長生きするのが嫌になってくるお話だ。ま、私には彼女のような悪者に狙われるほどの財産は無いが。

冒頭で主人公の悪女が、私はライオンか子羊か、と自問自答している。この手の質問を耳にする度に、毎回、大げさだなと思う。そもそも、我々ヒトはずる賢いサルだったからこの星の生態系の頂点に座っているのだ。卑怯は時に生き延びる手段だ。強い動物に憧れる気持ちは理解できるが、動物を用いる究極の質問に関しては、真面目に考える気にもなれない。

それにしても、欧米人はライオンを比喩に使うのが好きだ。サッカーワールドカップでデイヴィッド・ベッカムがレッドカードで退場になりイングランドが敗退した翌日の、彼の母国の新聞が「ライオンのような勇者たち10人と1人の愚か者」という見出しを打った事が、当時、話題になった。そして、昨年観た『エンド・オブ・ステイツ』では、ジェラルド・バトラーとダニー・ヒューストン演じる男たちが、俺たちはライオンだ、と話していた。私は虎や狼の方が好きだな。特に一匹狼の孤高の姿には憧れる。

人間は騙す側と騙される側に分けられるかもだが、私はどちらにも属したくない。こんな甘えた考え方をしていると詐欺師たちのカモになるのかもしれない。油断大敵な夜の中だ。

主人公の、老人たちを騙す事に執念を燃やす姿やマフィア相手でも一歩も引かない態度を痛快だと絶賛する方々が大勢いるが、私は、彼女には無様に死んでほしいと心から願っていた。そう思わせたロザムンド・パイクの演技は素晴らしかったと思う。でも、ヒーロー映画の悪者やサイコパスとは違う、一般市民の仮面を被る性根の腐った悪者を演じるってどんな気分なのかな。被害者の老人の一人を演じていたのがダイアン・ウィースト。可愛らしさと凄みを併せ持つ老女を好演していた。『運び屋』にも出ていた。齢70歳を過ぎても売れっ子の役者さんだ。

2022年2月8日火曜日

ピアース・ブロスナンの007

ピアース・ブロスナン主演の『007』シリーズの第17作から第20作をそれぞれ2020年秋にTV画面で初観賞。その後も折りに触れて観ているスパイ・アクション映画群。

MI6のエージェント、ジェームズ・ボンドの活躍が描かれている。

他のボンドたちと比べるとあまり評判がよくなかったので、ブロスナンの007にはあまり期待していなかったが、映像があまり古くないせいもあるのか結構楽しめた。ショーン・コネリーは男らしくて、ロジャー・ムーアはハンサムな上にユーモアがあって、ティモシー・ダルトンは堅物に見えた。ブロスナンは、確かに他のボンドと比べると存在感が薄いが、まあまあハンサムで適度に洗練されていてアクションも無難にこなしているので、概ね悪くはないと思う。

『ゴールデンアイ』の公開は1995年。良作。ボンドガールが敵味方共に綺麗だ。ファムケ・ヤンセンとイザベラ・スコルプコ。そして、ジュディ・デンチがMとして初登場。

『トゥモロー・ネバー・ダイ』の公開は1997年。スパイ・アクション映画としては良作だと思うが、概してあまり印象に残らなかった。

『ワールド・イズ・ノット・イナフ』の公開は1999年。ボンドガールとしてソフィー・マルソーが出演。公開時30代前半。10代だった頃の彼女にはよく見惚れたが、性悪な敵役である本作ではあまり魅力的には見えなかった。それだけ、役に徹していたということだろう。

『ダイ・アナザー・デイ』の公開は2002年。マドンナがカメオ出演。先日観覧した『ハウス・オブ・グッチ』に出ていた同じく歌姫のレディ・ガガは、あまり演技が上手いとは思わなかったが『ボディ』のマドンナよりは断然良かった。マドンナは欲張らずに歌とライブ・パフォーマンスに集中した方がファンも喜ぶと思う。そして、ジェフ・ブリッジスと同様、いかにもアメリカ人という出で立ちのマイケル・マドセンが出演。アメリカの竹内力だ。なぜか彼が出てくると嬉しくなる。存在感がある良い役者さん。ハル・ベリーも出演。それまで、ボンドガールは白人美女という固定観念があったので、アジア人やアフリカ系の俳優が出てくると、別に人種差別をしているつもりはなかったが、個人的には少し違和感を覚えていた。だが、ベリーには違和感が無かった。そして、人種はどうでもいいなと思い始めた。彼女の魅力が私の固定観念を変えてくれた。


ティモシー・ダルトンの007

ロジャー・ムーアの007

ショーン・コネリーの007

2022年2月2日水曜日

ドント・ルック・アップ

2021年12月、ヒューマントラスト有楽町にて『ドント・ルック・アップ』を初観賞。2021年公開のブラック・コメディ映画。錚々たる有名俳優たちが出演している。

地球に衝突する彗星を発見した大学教授と彼の教え子がその事をアメリカ政府や国民に知らせようと奮闘するお話。

アメリカ大統領とその息子で主席補佐官の人間性にあまりにもリアリティが無さ過ぎたので、これは気楽に観るべきコメディだなと早々に感じて、現在の社会を風刺している場面などを楽しんだが、レオナルド・ディカプリオ演じる大学教授とその家族や仲間たちのラストの描写がやけにリアルで、その時間も必要以上に長すぎると感じてしまい、その場面は全く笑えなかった。その描写がもう少しあっさり終わっていれば、観賞後に面白かったなと思えただろう。だから、その点が残念だった。そのラストの場面をリアルにするなら、大統領の人格ももう少しリアルにすべきだと思う。日本の総理大臣だったら、キングメーカーがより大きな影響力を持っている国でもあるし、世界への影響力はアメリカ大統領ほどでは無いので、多少軽薄な人間の設定でも問題は無いと思うが、アメリカの大統領は世界に影響を及ぼすわけだから、あんな浅はかな人間だったらそもそも議員にすらなれないはずだ。ブッシュさんやトランプさんの悪評も、多少はマスコミのネガティブ報道のせいだと思う。こんな風に感じてしまったのは、私が保守的な考え方を持っているせいかもしれないが。ニュースキャスターは、大衆受けしてテレビ局にとって都合の良いインテリに見える人間しかなれないわけだから、劇中のマヌケな二人で問題は無い。

メリル・ストリープは、設定された役柄の良し悪しはさておき、素晴らしい演技をしていたと思う。そして、若い頃はバリバリの美男俳優だったレオナルド・ディカプリオが、カッコいいとは言えないひげ面のオジサン大学教授を好演。後半にティモシー・シャラメも登場。出演俳優たちが豪華すぎないかとも感じたが、そう言えば若いハンサムな登場人物が出てないし、と納得。でも、俳優たちの出演料の総額は莫大だっただろうな。

この作品は概ね好評だ。私の感性は時代とズレている、と『最後の決闘裁判』に続いて感じてしまった。

2022年1月14日金曜日

ティモシー・ダルトンの007

ティモシー・ダルトンが主演した『007』シリーズの第15作と第16作、『リビング・デイライツ』と『消されたライセンス』を2020年秋にTV画面にて初観賞。その後もこれまでに数回観ているスパイアクション映画。それぞれ1987年と1989年に公開された。

イギリスの諜報機関の凄腕スパイ、ジェームズ・ボンドの活躍を描いた作品群。

ショーン・コネリーとロジャー・ムーアが演じていたボンドは、美女たちとすぐに男女の仲になるが、ティモシー・ダルトンが演じたボンドはそうではない。その上、ダルトンが演じた彼はジョークもより少ない。そのせいで彼は堅物に見える。それに、50代でボンドを演じていたムーアは40代前半の彼よりも若々しく見える。娯楽大作の主役としては、やはり、ロジャー・ムーアは別格だ。だが、真面目に見える分、ダルトンが主演した作品はスパイ物としては面白い。そして、後にダニエル・クレイグが演じたボンドと似ている、浮ついていないという点は好感が持てる。だが、歴代のジェームズ・ボンド俳優と比べるとやはり地味に映る。でも、それは、ボンド俳優としてはそう見えるというだけで、ダルトンがカッコいい俳優さんである事は確かだ。

2作品のボンドガールに関しては、ダルトンが歴代俳優と比べて華やかさに欠けるせいか、美人ぞろいだ。『リビング・デイライツ』のマリアム・ダボ、『消されたライセンス』のキャリー・ローウェルとタリサ・ソトがそれぞれ綺麗で妖艶だ。

そして、『消されたライセンス』には若いベニチオ・デル・トロが悪役で出演している。彼にとっては2作目の映画出演らしい。この頃から存在感がある俳優さんだ。

2作品ともダニエル・クレイグ主演の『007』と同じくシリアスな作風だが、あくまでも私の主観だが、ダルトンにはクレイグほどの男の色気が感じられないので、ファンの方には申し訳ないが、両作とも『007』作品としてはあまり好きではない。だが、スパイ映画としては良作だと思う。


ロジャー・ムーアの007

ショーン・コネリーの007


2022年1月6日木曜日

ラストナイト・イン・ソーホー

2021年12月、Movix亀有にて『ラストナイト・イン・ソーホー』を初観賞。2021年公開のホラー映画。主演はトーマシン・マッケンジー。宣伝用のポスターからアニャ・テイラー=ジョイが主人公を演じているのかと思いきや、主役はトーマシンだった。『オールド』では出演シーンが期待していたよりも短かったが、本作では全編にわたってその美しい姿を拝めたので嬉しい限りだった。

田舎からロンドンに出てきた若い女性エリーが、あるアパートで生活を始めて以降、夜な夜な霊的な体験をする物語。

ある女性の悲しい過去を垣間見る霊感の強いエリー。美しいトーマシン・マッケンジーが演じたその彼女の、やたらと街中を走り回る姿や、笑顔、怯える顔といった様々な表情が終始愛らしくて、ホラーというよりもファンタジーに感じた。そして、後半の展開にも惹き込まれた。マジで面白かった。

冒頭の、田舎の実家で踊るエリーの愛らしい笑顔にまず惹き込まれた。そして、彼女がロンドンのデザイン学校の寮で生活を始めた時、彼女が聴いていた、私も大好きなバンド、キンクスを、生意気そうな若い男が、ジジイが聴く音楽だと言って彼女を馬鹿にする場面で彼女への感情移入の度合いが高まった。人の好みを馬鹿にするヤツは最低だ。また、彼女を事あるごとに田舎から出てきた変わり者だとからかう彼女の性悪なルームメートの顔が、田舎から上京した頃、建物の高い東京は空が狭いと感じた事を東京育ちの同僚に話した時にポエムみたいねとバカにしてきたその東京女の意地悪な顔を連想させた。田舎者を馬鹿にするヤツはキライだ。それで、余計にエリーが愛しくなった。音楽も私好みだった。キンクスだけでなく、アニャ・テイラー=ジョイ演じるサンディがオーディションで歌った「ダウンタウン」は私の大好きな曲だ。様々な要素が私の心の琴線に触れる為、個人的にとても愛おしい物語だった。

ホラー要素も割とあるが、そんな事を忘れさせる美しいトーマシン・マッケンジーと物語の展開に酔いしれた作品。彼女と脚本が素晴らしい。

2022年1月5日水曜日

最後の決闘裁判

2021年11月、Movix亀有にて『最後の決闘裁判』を初観賞。2021年公開の歴史映画。公開時83歳のリドリー・スコット監督作。1386年に実際に起きた事件を基にしている。

騎士カルージュの妻マルグリットが夫の友人ル・グリから性的暴行を受け、それを知ったカルージュが決闘裁判でル・グリと対決するお話。物語は3人の視点で描かれている。

マット・デイモンが演じたカルージュは無骨で何よりも自分の名誉が大事な男。アダム・ドライバー演じるル・グリは知的で世渡り上手で女性に独りよがりな想いを押し付ける男。二人とも地方の有力者の中にいそうな人物だ。小さな世界のトップに立てば大抵の事は自分の思い通りになるし、法を犯しても、それをもみ消せるし周りの人間たちに守られる。私は地方出身なのでその程度の事はあり得ることだと知っている。自分のプライドが何よりも大切なカルージュは妻の本当の気持ちを知ろうとせず、マルグリットに横恋慕しているル・グリは、彼女がガサツな夫に実は嫌気がさしていて知的な自分に好意を抱いていると思い込んで、カルージュ不在時の家を突然訪問して彼女を凌辱する。ここまでは、現代でも起こり得る悲劇だ。その後、カルージュは己の面子にかけてル・グリと決闘する事となる。ジョディ・カマー演じるマルグリットは、女性に真摯に向き合えない彼らに翻弄される運命をただただ受け入れなければならなかった。現代以上に女性が差別されている時代の悲しいお話だ。お三方の演技はとても素晴らしかった。

相手の命を奪った方が正しいという判決が下される中世ヨーロッパの決闘裁判に関しては、理不尽だが、男としては理解できる。娯楽が少ない時代の決闘は、腕力に自信のある男たちにとって、アドレナリンが体中に湧き上がる快感を味わえる、ある意味、一種の娯楽であったのではないだろうか。私も男なので、徒に他人を傷つけたいという気持ちはないが、戦争や最終手段としての決闘の際の、本来ヒトに備わっている野性の本能を解放できる瞬間の快感は想像できる。

結局、時代が違い過ぎるので一現代人としては、特に決闘に関しては、シュールに感じる作品だった。だが、大勢の方々が感動しているので、自分の感受性が低いのかなと悲しくもなる。確かに、私には芸術に対する感性が欠けている。

2021年12月24日金曜日

アナザーラウンド

2021年10月、キネマ旬報シアターにて『アナザーラウンド』を初観賞。2021年9月公開のデンマーク映画。主演は、日本では「北欧の至宝」と呼ばれているマッツ・ミケルセン。

適度のアルコールが仕事やプライベートを充実させる事を証明するための大学か研究所による本格的な実験の被疑者になる男の物語、かと思いきや、実際には、適度のアルコールの効果について書かれたある学者の論文が正しいかどうかを割と真面目に確かめようとした仲良し高校教師4人組が、ある時から、飲むのが好きな人間なら誰しもが想像できるような展開に陥るお話。

その4人の友情が微笑ましかった。そして、マッツ様演じる冴えない歴史教師マーティンがお酒の力を借りて興味深い授業を始める様やその授業を受ける生徒たちの表情が生き生きとし出す様が微笑ましかった。まさに中年の危機を迎えていたマーティンとその妻とのドラマもまた観応えがあった。ラストシーンでは、マッツ様が、ダサい一般男性を演じた鬱憤を晴らすかのようなキレキレダンスを披露。爽快なエンディングだった。

デンマークと言えば、チョコデニッシュと2010年のサッカー南アフリカワールドカップで日本と対戦した国という知識しかなかった。あの試合では、オランダリーグのフェイエノールトで我らが小野伸二の同僚だったトマソンがPKを決めたが、その後、彼が負傷退場したこともあり楽に勝つことが出来た。そして、今回、この作品のおかげで新たにその北欧の国の雰囲気を若干だが知る事が出来た。外国映画の観賞は、文字情報だけでは得ることが出来ないその国の空気感等が堪能できて有意義だ。