2023年8月19日土曜日

42~世界を変えた男~

『42~世界を変えた男~』

ドラマ映画。実話。128分。2013年公開。ブライアン・ヘルゲランド監督作。チャドウィック・ポーズマン主演。ハリソン・フォード出演。

白人だけでプレイされていた1947年の大リーグに黒人として果敢に挑んだジャッキー・ロビンソンの物語。

何も悪い事をしていない人が理不尽に攻撃されている時、君はどうする、と問われた気がした。中には差別を快く思っていなかったりチャンスは公平に与えられるべきだと思う白人たちもいたようだが、ロビンソンさんへの白人からの罵詈雑言は見ていて本当に辛かった。そんな彼の偉業のおかげで多くの白人ではない選手たちが大リーガーになっている事を思うと本当に感慨深い。

チャドウィック・ポーズマンが誇り高き不屈な男ロビンソンさんを好演。怒りを抑え続ける姿には本当に感動した。そして、ハリソン・フォードもまた耐えるロビンソンさんを励ます球団のオーナーを好演。あんな状況が映画業界でもあったんだろうな、と想像させられた。

素晴らしい野球映画。

2023年8月18日金曜日

アンテベラム

『アンテベラム』

スリラー映画。106分。2020年公開。監督と脚本はジェラルド・ブッシュとクリストファー・レンツ。ジャネール・モネイ主演。

奴隷制度があった時代から続く、アメリカにおける一部の白人の黒人に対する強烈な差別意識がアフリカ系女性ヴェロニカを軸にしてトリッキーに描かれている。

ホテルのフロントやレストランのウエイトレスとして働く白人女性の、ジャネール・モネイ演じるヴェロニカへの冷たい態度がやたらリアルで、かの国ではまだ差別意識が今でも根強く残っていることが窺えた。そして、常に公平な目で周りを観るべきと改めて思った。好き嫌いは誰にでもあるからある程度は仕方がないが、やはり、偏見に満ちた差別はいけない。

2016年公開の『ドリーム』では全くそう思わなかったが、ジャネール・モネイが本当に美しい。そう言えば、2018年公開のスパイク・リー監督作の『ブラック・クランンズマン』に出ていたローラ・ハリアーも美しかった。アフリカ系の監督が撮るアフリカ系女性は本当に美しい、とも改めて思った。

人種差別問題を大胆に扱ったスリラー映画の怪作。

2023年8月17日木曜日

天使にラブ・ソングを…

『天使にラブ・ソングを…』

コメディドラマ映画。100分。1992年公開。エミール・アルドリーノ監督作。1985年公開のスティーブン・スピルバーグ監督作『カラーパープル』でデビューした、ウーピー・ゴールドバーグ主演。彼女は本作の大ヒットで世界的に有名になった。

マフィアのボスの愛人で小さなクラブの歌手、デロリスが、そのマフィアのボス自らが人を殺めた現場を目撃したことで彼から追われ、警察の勧めで修道院に潜伏することになり、そこの下手くそな聖歌隊の指揮者を任されて、そのメンバーたちとその地域に一大旋風を巻き起こすお話。

デロリスを演じたウーピー・ゴールドバーグが面白くて素敵だった。尼さんたちと仲良くなっていく様や、『ハリー・ポッター』のマクゴナガル先生でお馴染みのマギー・スミス演じる、厳格な修道院長と対峙する様が印象的。ハーヴェイ・カイテルもそのマフィアのボス役で安定感のある演技を披露。

しかし、『ブルース・ブラザーズ』と同等の面白さを期待していたせいか、良作ではあると思うが、個人的にはあまりハマれなかった。

2023年8月11日金曜日

ブレイブ ワン

『ブレイブ ワン』

サスペンス。122分。2007年公開。ニール・ジョーダン監督作。ジョディ・フォスター主演。

ある夜、暴漢に襲われて婚約者を殺され自身も瀕死の重傷を負った女性が、退院後、自衛と心の平穏の為に不法な手段で銃を手に入れて、その後、あるきっかけから街の悪者たちをその銃で退治し始めるお話。

愛する人を殺された方に復讐するなと誰が言えるのだろう。それがその方にとって自分の命よりも大事な人だったらなおさらだ。被害者の感情は刑の重さでは抑えられない。観賞後、そんな事を思った。ジョディ・フォスターがその女性エリカを好演。小柄で短髪な彼女が銃を構える姿が愛しくて凛々しかった。それに、公開当時は40代半ばのはずだが、まだ30代に見えて美しくもあった。そして、アフリカ系アメリカ人刑事との関係性にも胸が締め付けられた。

エリカの魂に焦点を当てた、正義とは何かを考えさせられた良作。

数年前に初観賞したブルース・ウィリス主演の『デス・ウィッシュ』があまり好きになれなかったので、そのオリジナル映画でもある、まだ未観だったチャールズ・ブロンソン主演の『狼よさらば』をその数か月後に観賞。自身の不在時に家でチンピラに愛妻を殺され愛娘も暴行された男が、その後、夜の町で街のならず者を私的に処刑するお話。1974年作なので時代を感じるが、本作と同じくらい好きだ。

2023年8月9日水曜日

怪物

『怪物』

ドラマ映画。126分。2023年公開。是枝裕和監督作。坂本裕二脚本。安藤サクラ、永山瑛太、黒川想矢出演作。カンヌ映画祭脚本賞受賞。

生徒の母親、教師、二人の生徒のそれぞれの視点で描かれたとある小学校の非日常。

それぞれにそれぞれの視点があるのは当たり前、と思いつつ、また、元子供なのになぜ大人たちは子供の心を忘れてしまうのだろう、と思いながら物語の推移を楽しんでいたが、後半に差し掛かって少年たちの本音が見え始めた時、え?そっち?これがカンヌの好み?と思ってしまった。自分が予想していなかった展開に落胆もした。そして、後半から話の原因が分かるその脚本は素晴らしいと思ったし、他人を偏見の目で見るのは止めようと改めて思ったが、そのドラマ自体はそれほど心に響かなかった。

是枝監督作はこれまでに8本観賞。面白いと感じたのは『歩いても 歩いても』と『海街diary』。カンヌ映画祭主演男優賞を受賞した『誰も知らない』やパルムドールを受賞した『万引き家族』では、アイデアは素晴らしいと思ったが、感動しなかった。こんなもんか、と思った。そして、脚本賞を受賞した本作も同様だ。どうやら、私は彼の野心的な作品はそれほど好きではないようだ。

2023年8月2日水曜日

アフターサン

『アフターサン』

ドラマ映画。101分。2022年公開作。シャーロット・ウェルズ監督作。ポール・メスカルとフランキー・コリオのW主演。

30歳の父親と11歳の娘の避暑地における一夏の想い出。

初観賞時の前半までは、エル・ファニングが出ていた『SOMEWHERE』みたいな映画だな、と思っていたが、父親が夜の海に駆けだす場面で、これは少し違うな、と感じて襟を正した。ラストのお別れと、その光景を思い出していた、大人になった娘の姿に切なくなり、エンドロールが終わってもしばらく席を立てなかった。その後、どうしてももう一度観たくて約10日後に再観覧。終盤に流れ出すクイーンとデヴィッド・ボウイの合作曲「アンダー・プレッシャー」に合わせて楽しそうに踊る父、空港で無邪気におどけ続ける娘、そして、それを回想している20年後の娘の姿に胸が締め付けられた。再び心を持っていかれた。

観覧後、本作がシャーロット・ウェルズ監督の個人的な経験を元に製作された事を知り、深く感銘。秀作。

2023年7月31日月曜日

ワイルド・スピード 第10作

『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』

アクション映画。141分。2023年公開作。ルイ・レテリエ監督作。ヴィン・ディーゼル主演。ミシェル・ロドリゲス、シャーリーズ・セロン共演。

観覧した前作は面白かったが、TVで放映された時はつまらなく感じたので、『ワイルド・スピード』シリーズはもう卒業かな、と思ったが、本作が公開されると、やはり、どうしても気になって映画館に足を運んだ。そして、やはり面白かった。映画館で観る映画だ。今回は、ヴィン・ディーゼル、ミシェル・ロドリゲス、そして、敵役のジェイソン・モモアがカッコよかったが、シャーリーズ・セロンのアクションも面白かった。

死んだと思っていたキャラがよく再登場する作風なので、ドムの息子の母親も次作でロック様とともに再登場するのではと邪推している、お祭りのようなシリーズ。

2023年7月27日木曜日

TAR/ター

『TAR/ター』

ドラマ映画。158分。2022年公開作。トッド・フィールド脚本・監督作。ケイト・ブランシェット主演。

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の女性初の首席指揮者であり作曲家でもある、リディア・ターの音楽家としての生き様が描かれている。

クラシックに詳しくないのでよく分からない言葉が多かったが、すごく面白くて、劇場で2回観覧した。リディアを演じた大人の女性の魅力たっぷりのケイト・ブランシェットが終始画面に登場。静かな場面が多くて、主演の彼女だけでなく、その全体的な雰囲気の良さにも魅せられた。

数十人の楽団を率いる指揮者にはある程度の傲慢さは必要だ。男社会で闘っている女性だったらなおさらだ。リディアの傲慢さもまた妥当に思えたが、それがある悲劇を生む。その事件がマスメディアやネット上でセンセーショナルに扱われ、彼女はバッシングを受けて孤独になって自分を見失う。完璧な社交性を持ち合わせていなかったリディアにも責任があるかもだが、私は、そんな彼女の人間臭さにも惹かれて、ネット上の言葉に過剰に反応する社会や彼女を支えるべき人たちの嫉妬や裏切りがとても醜く感じられた。そして、その後も音楽とともに生き続けた彼女の姿からは元気をもらった。

ケイト・ブランシェットが憑依しているかのごとくリディア・ターを真摯に好演。役柄に心身ともに没頭していたように感じたので、撮影後に引退をほのめかしたという話も、もうあれ以上の演技は出来ないと感じたのだろうと思えて、理解できた。

彼女の、俳優として、というよりも、女性としての魅力が詰まった、素晴らしい作品。

2023年6月21日水曜日

デヴィッド・ボウイ ムーンエイジ・デイドリーム

 『デヴィッド・ボウイ ムーンエイジ・デイドリーム』

ドキュメンタリー映画。2022年公開。140分。ブレット・モーゲン監督作。TOHOシネマズ 流山おおたかの森のIMAXで初観覧。キネマ旬報シアターにて再観覧。

ロック・ミュージシャン、デヴィッド・ボウイの生涯が主に彼自身の言葉と音楽で語られている。

70年代の派手なファッションに身を包んだ彼は、ゲイが精神病だと思っていた、無知だった子供の私には奇異に映っていた。だが、彼が、当時、バイセクシャルである事を公表して社会の偏見と闘っていた事を本作で知り、彼がただの有名ロック・ミュージシャンではなく人格者だったことに感銘を受けた。ストーンズ、ピストルズ、オアシスといったロックバンドが好きなので、実は、数年前まで、ソロ・アーティストだったデヴィッド・ボウイにはあまり関心が無かった。それでも彼のアルバム『レッツ・ダンス』と『トゥナイト』は持っていた。その中で一番好きだった曲は、先月お亡くなりになったティナ・ターナーさんとのデュエット「トゥナイト」。そして、長い間、ノリのいい「ブルー・ジーン」が彼の代表曲だと思っていた。『レッツ・ダンス』に関しては、シングルカットされた同名曲と「チャイナ・ガール」が好きではなかったので、あまり聴いていなかったが、数年前に観賞した映画『フランシス・ハ』で使われていた一曲目の「モダン・ラブ」が凄くカッコいいことに遅まきながら気づいて、『レッツ・ダンス』を軽んじていた事を後悔した。その後、映画館で観た『ジョジョ・ラビット』のエンディング曲、「ヒーローズ」の素晴らしさにも感動。その曲がベルリンの壁崩壊に一役買っていたことも後で知って、彼の他の曲も聴き始め、彼への印象が大きく変わっていた昨今だったので、本作は、そんな私にはうってつけだった。

観覧中に涙したのは「ヒーローズ」のイントロが流れ出した時。彼のファンもまた皆ファッショナブルでカッコよくって、なんだかボウイの分身のように感じた。彼らの彼への崇拝ぶりは、彼の存在が彼らにとっていかに大きいのかを物語っていて、なぜ、長い間、彼の凄さに気づけなかったのかと改めて恥ずかしくなった。

また、ジョン・レノンやフレディ・マーキュリーと同じく、彼が日本に好感を持っていた事は、日本人として嬉しかった。

デヴィッド・ボウイの、歌手や役者といったパフォーマーとしてだけではなく、人としての魅力が詰まったドキュメンタリー映画の傑作。

2023年5月31日水曜日

RUN/ラン

『RUN/ラン』

スリラー映画。2020年に配信にて公開。アニーシュ・チャガンティ監督作。主演はサラ・ポールソンとキーラ・アレン。

大学進学を目指している、一人っ子で生まれつき足が不自由なクロエが、それまで自分を育ててくれたシングルマザーのダイアンが自分に隠し続けてきた秘密を知って、彼女から逃れるために奮闘するお話。

冒頭から不穏な雰囲気を漂わせていたダイアン。彼女の思い詰めたような険しい表情から、私に対して超過保護だった実の母親を連想。観ながら苛々し始めた。だから、徐々にダイアンに対して不信感を抱き始めたクロエにはすぐに感情移入できた。そして、疑心暗鬼になってダイアンに隠れて色々調べ始めて恐ろしい事実を知るクロエを観ながら、世界で一番信用できると思っていた人が実はそうではないと悟った時の絶望感を思い出して胸が苦しくなり、ダイアンと決別すべく奮闘する彼女に心から同情しつつ全力で応援した。他人事ではなかった。だが、一般的にはそれほど珍しくも無い私の些細な過去の心の傷を遥かに凌駕するクロエの哀しい生い立ちの全貌が明らかになった時、本作がフィクションである事を思い出して、逆に少し落ち着いた。

早い段階から終盤までハラハラドキドキの連続で最後まで緊張感が漲っているスリラーの良作。主演のお二人の演技は最初から最後まで素晴らしかった。そして、自分の少年時代の思い出とも重なったので忘れられない作品になった。