2023年7月27日木曜日

TAR/ター

TAR/ター』

ドラマ映画。158分。2022年公開作。トッド・フィールド脚本・監督作。ケイト・ブランシェット主演。

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の女性初の首席指揮者であり作曲家でもある、リディア・ターの音楽家としての生き様が描かれている。

クラシックに詳しくないのでよく分からない言葉が多かったが、すごく面白くて、劇場で2回観覧した。リディアを演じた大人の女性の魅力たっぷりのケイト・ブランシェットが終始画面に登場。静かな場面が多くて、主演の彼女だけでなく、その全体的な雰囲気の良さにも魅せられた。

数十人の楽団を率いる指揮者にはある程度の傲慢さは必要だ。男社会で闘っている女性だったらなおさらだ。リディアの傲慢さもまた妥当に思えたが、それがある悲劇を生む。その事件がマスメディアやネット上でセンセーショナルに扱われ、彼女はバッシングを受けて孤独になって自分を見失う。完璧な社交性を持ち合わせていなかったリディアにも責任があるかもだが、私は、そんな彼女の人間臭さにも惹かれて、ネット上の言葉に過剰に反応する社会や彼女を支えるべき人たちの嫉妬や裏切りがとても醜く感じられた。そして、その後も音楽とともに生き続けた彼女の姿からは元気をもらった。

ケイト・ブランシェットが憑依しているかのごとくリディア・ターを真摯に好演。役柄に心身ともに没頭していたように感じたので、撮影後に引退をほのめかしたという話も、もうあれ以上の演技は出来ないと感じたのだろうと思えて、理解できた。

彼女の、俳優として、というよりも、女性としての魅力が詰まった、素晴らしい作品。

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