2023年10月6日金曜日

映画『バービー』(2023年)

コメディ映画。114分。グレタ・ガーウィグ監督作。マーゴット・ロビー主演。

おもちゃの世界のバービーランドで楽しく生きていたバービーが、死について考え始めたのを機に現実世界に行って真実を悟るお話。

「女子供は黙ってろ」と怒鳴る父と、「男社会のこの国では女は損」とよく愚痴ったり嘆いたりしていた母の子供だったので性差別には割と敏感に育ってきた。そんな私は、母が敬愛していた田島陽子先生に対しては、面白いけど何かすきになれないな、と思っていたが、ここ数年で観覧した『スキャンダル』や『プロミシング・ヤング・ウーマン』といった作品から、性差別への考え方がアメリカでは少しずつ変わり始めてきているのを感じ始めていた。そして、『レディ・バード』、『ストーリー・オブ・マイライフ』と本作を監督したグレタ・ガーウィグは、『ドント・ウォーリー・ダーリン』を監督したオリヴィア・ワイルド同様、女性解放問題について深く考えさせてくれる女性だ。本作は、ファンタジー物で色もピンク過ぎたので個人的には好みではないが、それでも、虚勢を張る男たちへの彼女の意見には共感した。

出演者に関しては、主演のマーゴット・ロビーが、前作の『バビロン』と同様に、本当に美しくて艶やかで演技もまた素晴らしかった。終始輝いていた。

公開前に耳にした原爆のきのこ雲は本編には現れず。観覧後に詳しく調べてみたらSNS上の話であった。反核の精神は忘れるべきではないが、あんな騒ぎで本作の観覧を止めるのはもったいない話だ。

2023年8月19日土曜日

映画『42~世界を変えた男~』(2013年)

ドラマ映画。実話。128分。ブライアン・ヘルゲランド監督作。チャドウィック・ポーズマン主演。ハリソン・フォード出演。

白人だけでプレイされていた1947年の大リーグに黒人として果敢に挑んだ故ジャッキー・ロビンソンの物語。

何も悪い事をしていない人が理不尽に攻撃されている時、君はどうする、と問われた気がした。中には差別を快く思っていなかったりチャンスは公平に与えられるべきだと思う白人たちもいたようだが、ロビンソンさんへの白人からの罵詈雑言は見ていて本当に辛かった。そんな彼の偉業のおかげで多くの白人ではない選手たちが大リーガーになっている事を思うと本当に感慨深い。

誇り高き不屈な男ロビンソンさんを演じたチャドウィック・ポーズマンが素晴らしかった。怒りを抑え続ける姿には本当に感動した。そして、もまた耐えるロビンソンさんを励ます球団のオーナーを演じたハリソン・フォードも素晴らしい。あんな状況が映画業界でもあったんだろうな、と想像してしまった。

素晴らしい野球映画。

2023年8月18日金曜日

映画『アンテベラム』(2020年)

スリラー映画。106分。監督と脚本はジェラルド・ブッシュとクリストファー・レンツ。ジャネール・モネイ主演。

奴隷制度があった時代から続く、アメリカにおける一部の白人の黒人に対する強烈な差別意識がアフリカ系女性ヴェロニカを軸にしてトリッキーに描かれている。

ホテルのフロントやレストランのウエイトレスとして働く白人女性の、ジャネール・モネイ演じる、ヴェロニカへの冷たい態度がやたらリアルで、かの国ではまだ差別意識が今でも根強く残っていることが窺えた。そして、常に公平な目で周りを観るべきと改めて思った。好き嫌いは誰にでもあるからある程度は仕方がないが、やはり、偏見に満ちた差別はいけない。

2016年公開の『ドリーム』では全くそう思わなかったが、ジャネール・モネイが本当に美しい。そう言えば、2018年公開のスパイク・リー監督作の『ブラック・クランンズマン』に出ていたローラ・ハリアーも美しかった。アフリカ系の監督が撮るアフリカ系女性は本当に美しい、とも改めて思った。

人種差別問題を大胆に扱ったスリラー映画の怪作。

2023年8月17日木曜日

映画『天使にラブ・ソングを…』(1992年)

コメディドラマ映画。100分。エミール・アルドリーノ監督作。1985年公開のスティーブン・スピルバーグ監督作『カラーパープル』でデビューした、ウーピー・ゴールドバーグ主演。彼女は本作の大ヒットで世界的に有名になった。

マフィアのボスの愛人で小さなクラブの歌手、デロリスが、そのマフィアのボス自らが人を殺めた現場を目撃したことで彼から追われ、警察の勧めで修道院に潜伏することになり、そこの下手くそな聖歌隊の指揮者を任されて、そのメンバーたちとその地域に一大旋風を巻き起こすお話。

デロリスを演じたウーピー・ゴールドバーグが面白くて素敵だった。尼さんたちと仲良くなっていく様や、『ハリー・ポッター』のマクゴナガル先生でお馴染みのマギー・スミス演じる、厳格な修道院長と対峙する様が印象的。ハーヴェイ・カイテルもそのマフィアのボス役で安定感のある演技を披露。

しかし、『ブルース・ブラザーズ』と同等の面白さを期待していたせいか、良作ではあると思うが、個人的にはあまりハマれなかった。

2023年8月11日金曜日

映画『ブレイブ ワン』(2007年)

サスペンス。122分。ニール・ジョーダン監督作。ジョディ・フォスター主演。

ある夜、暴漢に襲われて婚約者を殺され自身も瀕死の重傷を負った女性が、退院後、自衛と心の平穏の為に不法な手段で銃を手に入れて、その後、あるきっかけから街の悪者たちをその銃で退治し始めるお話。

愛する人を殺された方に復讐するなと誰が言えるのだろう。それがその方にとって自分の命よりも大事な人だったらなおさらだ。被害者の感情は刑の重さでは抑えられない。観賞後、そんな事を思った。その女性エリカを演じたジョディ・フォスターに魅せられた。小柄で短髪な彼女が銃を構える姿が愛しくて凛々しかった。それに、公開当時は40代半ばのはずだが、まだ30代に見えて美しくもあった。そして、アフリカ系アメリカ人刑事との関係性にも胸が締め付けられた。

エリカの魂に焦点を当てた、正義とは何かを考えさせられた良作。

数年前に初観賞したブルース・ウィリス主演の『デス・ウィッシュ』があまり好きになれなかったので、そのオリジナル映画でもある、まだ未観だったチャールズ・ブロンソン主演の『狼よさらば』をその数か月後に観賞。自身の不在時に家でチンピラに愛妻を殺され愛娘も暴行された男が、その後、夜の町で街のならず者を私的に処刑するお話。1974年作なので時代を感じるが、本作と同じくらい好きだ。

2023年8月9日水曜日

映画『怪物』(2023年)

ドラマ映画。126分。是枝裕和監督作。坂本裕二脚本。安藤サクラ、永山瑛太、黒川想矢出演作。カンヌ映画祭脚本賞受賞。

生徒の母親、教師、2人の生徒のそれぞれの視点で描かれたとある小学校の非日常。

それぞれにそれぞれの視点があるのは当たり前、と思いつつ、また、元子供なのになぜ大人たちは子供の心を忘れてしまうのだろう、と思いながら物語の推移を楽しんでいたが、後半に差し掛かって少年たちの本音が見え始めた時、え?そっち?これがカンヌの好み?と思ってしまった。自分が予想していなかった展開に落胆もした。そして、後半から話の原因が分かるその脚本は素晴らしいと思ったし、他人を偏見の目で見るのは止めようと改めて思ったが、そのドラマ自体はそれほど心に響かなかった。

是枝監督作はこれまでに8本観賞。面白いと感じたのは『歩いても 歩いても』と『海街diary』。カンヌ映画祭主演男優賞を受賞した『誰も知らない』やパルムドールを受賞した『万引き家族』では、アイデアは素晴らしいと思ったが、感動しなかった。こんなもんか、と思った。そして、脚本賞を受賞した本作も同様だ。どうやら、私は彼の野心的な作品はそれほど好きではないようだ。

2023年8月2日水曜日

映画『アフターサン』(2022年)

ドラマ映画。101分。2022年公開作。シャーロット・ウェルズ監督作。ポール・メスカルとフランキー・コリオのW主演。

30歳の父親と11歳の娘の避暑地における一夏の想い出。

初観賞時の前半までは、エル・ファニングが出ていた『SOMEWHERE』みたいな映画だな、と思っていたが、父親が夜の海に駆けだす場面で、これは少し違うな、と感じて襟を正した。ラストのお別れと、その光景を思い出していた、大人になった娘の姿に切なくなり、エンドロールが終わってもしばらく席を立てなかった。

その後、どうしてももう一度観たくて約10日後に再観覧。

終盤に流れ出す「クイーン」とデヴィッド・ボウイの合作曲「アンダー・プレッシャー」に合わせて楽しそうに踊る父、空港で無邪気におどけ続ける娘、そして、それを回想している20年後の娘の姿に胸が締め付けられた。再び心を持っていかれた。

観覧後、本作がシャーロット・ウェルズ監督の個人的な経験を元に製作された事を知り、深く感銘。秀作。

2023年7月31日月曜日

映画『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』(2023年)

『ワイルド・スピード』第10作。アクション映画。141分。ルイ・レテリエ監督作。ヴィン・ディーゼル主演。ミシェル・ロドリゲス、シャーリーズ・セロン共演。

観覧した前作は面白かったが、TVで放映された時はつまらなく感じたので、『ワイルド・スピード』シリーズはもう卒業かな、と思ったが、本作が公開されると、やはり、どうしても気になり、映画館に足を運んだ。そして、やはり面白かった。映画館で観る映画だ。今回は、ヴィン・ディーゼル、ミシェル・ロドリゲス、そして、敵役のジェイソン・モモアがカッコよかったが、シャーリーズ・セロンのアクションも観応えがあった。

死んだと思っていたキャラがよく再登場する作風なので、ドムの息子の母親も次作でロック様とともに再登場するのではと邪推している、お祭りのようなシリーズ。

2023年7月27日木曜日

映画『TAR/ター』(2022年)

ドラマ映画。158分。トッド・フィールド脚本・監督作。ケイト・ブランシェット主演。

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の女性初の首席指揮者であり作曲家でもある、リディア・ターの音楽家としての生き様。

クラシックに詳しくないのでよく分からない言葉が多かったが、すごく面白くて、劇場で2回観覧した。リディアを演じた大人の女性の魅力たっぷりのケイト・ブランシェットが終始画面に登場。静かな場面が多くて、主演の彼女だけでなく、その全体的な雰囲気の良さにも魅せられた。

数十人の楽団を率いる指揮者にはある程度の傲慢さは必要だ。男社会で闘っている女性だったらなおさらだ。リディアの傲慢さもまた妥当に思えたが、それがある悲劇を生む。その事件がマスメディアやネット上でセンセーショナルに扱われ、彼女はバッシングを受けて孤独になって自分を見失う。高度な社交性を持ち合わせていなかったリディアにも責任があるかもだが、私は、そんな彼女の人間臭さにも惹かれて、ネット上の言葉に過剰に反応する社会や彼女を支えるべき人たちの嫉妬や裏切りがとても醜く感じられた。そして、その後も音楽とともに生き続けた彼女の姿からは元気をもらった。

何かが憑依しているかのようなリディア・ターを真摯に演じていたケイト・ブランシェットに魅せられた。役柄に心身ともに没頭していたように感じたので、撮影後に引退をほのめかしたという話も、もうあれ以上の演技は出来ないと感じたのだろうと思えて理解できた。

ケイト・ブランシェットの、俳優として、というよりも、女性としての魅力が詰まった、素晴らしい作品。

2023年6月21日水曜日

映画『デヴィッド・ボウイ ムーンエイジ・デイドリーム』(2022年)

ドキュメンタリー映画。2022年公開。140分。ブレット・モーゲン監督作。IMAXで初観覧。キネマ旬報シアターにて再観覧。

ロック・ミュージシャン、デヴィッド・ボウイの生涯が主に彼自身の言葉と音楽で語られている。

70年代の派手なファッションに身を包んだ彼は、ゲイが精神病だと思っていた、無知だった子供の私には奇異に映っていた。しかし、彼が、当時、バイセクシャルである事を公表して社会の偏見と闘っていた事を本作で知り、彼がただの有名ロック・ミュージシャンではなく人格者だったことに感銘を受けた。

ストーンズ、ピストルズ、オアシスといったロックバンドが好きなので、実は、数年前まで、ソロ・アーティストだったデヴィッド・ボウイにはあまり関心が無かった。それでも彼のアルバム『レッツ・ダンス』と『トゥナイト』は持っていた。その中で一番好きだった曲は、先月お亡くなりになったティナ・ターナーさんとのデュエット「トゥナイト」。そして、長い間、ノリのいい「ブルー・ジーン」が彼の代表曲だと思っていた。『レッツ・ダンス』に関しては、シングルカットされた同名曲と「チャイナ・ガール」が好きではなかったので、あまり聴いていなかったが、数年前に観賞した映画『フランシス・ハ』で使われていた一曲目の「モダン・ラブ」が凄くカッコいいことに遅まきながら気づいて、『レッツ・ダンス』を軽んじていた事を後悔した。その後、映画館で観た『ジョジョ・ラビット』のエンディング曲、「ヒーローズ」の素晴らしさにも感動。その曲がベルリンの壁崩壊に一役買っていたことも後で知って、彼の他の曲も聴き始め、彼への印象が大きく変わっていた時期だったので、本作は、そんな私にはうってつけだった。

観覧中に涙したのは「ヒーローズ」のイントロが流れ出した時。彼のファンもまた皆ファッショナブルでカッコよくって、なんだかボウイの分身のように感じた。彼らの彼への崇拝ぶりは、彼の存在が彼らにとっていかに大きいのかを物語っていて、なぜ、長い間、彼の凄さに気づけなかったのかと改めて恥ずかしくなった。

また、ジョン・レノンやフレディ・マーキュリーと同じく、ボウイが日本に好感を持っていた事は、日本人として嬉しかった。

デヴィッド・ボウイの、歌手や役者といったパフォーマーとしてだけではなく、人としての魅力が詰まったドキュメンタリー映画の傑作。