2023年3月10日金曜日

シー・セッド

SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』

ドラマ映画。2022年公開。135分。マリア・シュラーダー監督作。主演はキャリー・マリガンとゾーイ・カザン。原作は2019年に出版されたミーガン・トゥーイーとジョディー・カンター共著のノンフィクション『その名を暴け-#MeTooに火をつけたジャーナリストたちの闘い-』。2023年1月と2月にMovix亀有にて観覧。

自身の性犯罪の数々をもみ消してきた映画界の大物プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタイン、を告発すべく奔走するニューヨーク・タイムズ紙の二人の記者の物語。

観賞前は、『プロミシング・ヤング・ウーマン』ではレイプ犯を擁護する女性を含めた仲間たちに復讐する役を童顔ながら全うしていたが、キャリー・マリガンが果たして本作の巨悪に挑む役を演じられるのかな、と思っていたが、それは杞憂に終わった。彼女は、可愛らしさを保ちつつもしなやかな強さや大胆さを見事に表出していた。特に、バーで男にナンパされる場面でのFワードを連発する姿には惚れ惚れした。

単なる男女間の対立ではなく、その卑劣漢を擁護する、女性を含めた彼の取り巻きたちや、彼を守り続けた法システムに挑んだ、そして、グウィネス・パルトローやアシュレイ・ジャッドのような大物俳優を含めた、長年沈黙を強いられた被害女性の方々の屈辱感を払拭すべく立ち上がったニューヨーク・タイムズ紙の闘い。夫たちや会社の上司たちに支えられながら、被害者たちへの取材を不屈の精神で粘り強く続けたミーガン・トゥーイーとジョディー・カンター。二人を演じたキャリーとゾーイ・カザンがそれぞれ凛々しくて魅力的だ。そして、上司たちとギリギリまで確認し合った告発記事が投稿される時のクリックにカタルシスを感じた。

サマンサ・モートンも被害女性の友人役で出演。ワインスタインに恨みがあるのか、はたまた、似たような経験があったのか、心に残る迫真の演技だった。

2019年作の『スキャンダル』はアカデミー賞の3部門にノミネートされたが、映画人の多くがまだワインスタインに恩義を感じているのか、多少のセクハラ行為は是だとまだ内心思っているのか、本作は全部門でノミネートすらされていない。観覧した『トップガン マーヴェリック』や『エルヴィス』のノミネートは嬉しかったが、ほかのオスカー候補の作品もまた『シー・セッド』より素晴らしいのだろう。

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